洋上風力発電は再生可能エネルギー普及の切り札として注目される。着実に進める上で、環境への影響やコストなどの課題を丁寧に解決することが欠かせない。
経済産業省と国土交通省は村上市・胎内市沖を洋上風力発電整備の促進区域に指定した。本県では初めてだ。全国の指定海域は合計9カ所となった。
指定されたことで選定事業者に最長30年の海域占用が許可され、事業実施が可能になる。建設方式は風車の土台を海底に固定する「着床式」が検討されている。
本県の促進区域は村上市岩船港沖以南の幅約18キロ、海岸から約5・6キロ以内の海域だ。大手建設会社など少なくとも6事業体が参入を検討中とみられ、国は年内にも事業者の公募を始める見通しだ。
国は脱炭素化に向け再生エネの導入に力を入れている。洋上風力は陸上より風が安定して吹くことなどのメリットが大きい。
県は2019年から洋上風力発電の導入に向けた官民の研究会を開き、最も議論が進んでいた村上市・胎内市沖について、漁業者や地元住民ら利害関係者と課題を話し合ってきた。
今年6月には、地元自治体や県、漁業関係者らでつくる法定協議会が、漁業への影響調査実施などを条件に促進区域指定に「異存なし」との結論を出した。
順調に手続きが進められてきたが、法定協ではさまざまな懸念が示された。
漁業関係者は操業の支障や事故、海上無線の電波への影響などを心配した。海運関係者は新潟東港を利用する航路の安全性などを危惧した。村上市特産のサケの生態調査を求める声も上がった。
洋上風力発電については、他にも騒音や鳥類の生息環境への影響などが心配されている。
事業者や国、県、地元自治体はこうした不安に対し、真摯(しんし)に応えていくことが求められる。
秋田県能代市の能代港沖では、大規模な洋上風力として日本初の商業運転が始まった。先行例として参考にしてもらいたい。
村上市はかつて、岩船沖で洋上風力の導入計画を進め、事業者選定まで行った。だが建設コストなどで採算が見込めず、事実上の無期限延期となった経緯がある。
今回参入する事業者は同じ轍(てつ)を踏まぬよう、実現可能な計画づくりに注力してほしい。国や県などもしっかり後押しするべきだ。
県は新潟東港を県内外の洋上風力の建設拠点となる「基地港湾」に指定するよう国に要望している。指定に向け、県の審議会は港湾計画の一部変更を承認した。
大型作業船が接岸できる水深や、巨大な資材を置ける広い敷地を確保する方針だ。
県内初の洋上風力発電施設の建設を契機に、より戦略的な東港の活用にもつなげてもらいたい。













