群馬県側から見た三国峠。県境の新三国トンネル(中央下)を抜けると、そこは雪国・湯沢町だ。奥は苗場スキー場(本社ヘリから、写真映像部・大渕一洋撮影)

 「三国峠を切り崩す。そうすれば季節風は太平洋側に抜けて、越後に雪は降らなくなる」

 新潟県出身の田中角栄元首相は若い頃、そう主張した。「入門 田中角栄」(新潟日報社編)などによると、昭和20年代初めの総選挙に出馬した際の演説だという。工事で出た土で海を埋めれば佐渡と陸続きになる、とも言ったとか。

 もちろん本気で実現を目指したとは思えない。雪国と太平洋側との格差を訴えたのだろう。でも今冬、除雪をしながら記者はふと考えた。本当に三国峠を切り崩すなら、どんな大事業になるだろうか。そして雪は降らなくなるのか、と。

 まずは工事の疑問から。県内建設最大手の福田組(新潟市中央区)に尋ねると壮大な試算が返ってきた。

(報道部・高橋哲朗)...

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