穏やかな元日の夕方を大きな揺れが襲い、正月気分を吹き飛ばした。石川県の能登半島を中心に、相当な数の死傷者や行方不明者が出ている。県内にもけがをした多くの人がいる。

 人命救助が最優先だ。倒壊した家屋に閉じ込められた人を、一刻も早く救出してほしい。

 被害状況は深刻だ。救助するためにも、被害の全容を早く把握しなければならない。高齢者が多い避難者の安全確保にも全力を尽くしてもらいたい。

 1日午後4時10分ごろ、石川県志賀町で震度7の地震があり、北海道から九州にかけ広い範囲で揺れを観測した。地震の規模はマグニチュード(M)7・6と推定される。

 県内では長岡市で震度6弱を観測したほか、広範囲で震度5強や5弱を観測した。

 気象庁は大きな余震が続き、1週間程度は注意が必要と呼びかけている。

 被災者はもとより、救助に当たる人も二次被害の防止に万全の注意を払ってもらいたい。

 ◆あらゆる災害起きた

 気象庁は志賀町での揺れの最大加速度が2826ガルを記録し、2011年の東日本大震災で震度7だった宮城県栗原市の2934ガルに匹敵する大きさだったと明らかにした。

 加速度が大きいと、一般的に揺れや被害が大きくなると想定されている。専門家は「倒壊や津波、火災、地滑り、液状化など地震災害のあらゆる要素が起きた」と指摘する。

 輪島市中心部の火災は地震の恐ろしさを改めて見せつけた。古い木造住宅や商店が複数倒壊し、随所から出火して約200棟を延焼したとみられる。

 倒壊したビルが隣りの建物を押しつぶし、警察官らが壊れた住宅内を捜索した。

 気象庁は地震発生時に能登地方に東日本大震災以来となる大津波警報を発表、輪島港で1・2メートル以上の津波を観測した。

 震源に近い漁港では津波で転覆した多くの小型船が確認された。珠洲市などの沿岸には、多数の家屋が流されたとみられる形跡もあった。

 日本海側では沖にある断層が比較的陸に近いため、津波の到達時間が早いとされる。一刻も早く高台に逃げるなどの避難行動が取られたと信じたい。

 本県にも津波警報が出され、柏崎市で40センチ、佐渡市で30センチを観測した。上越市では海の家が押し流され、関川河口付近では住宅街に流れ込んだ。

 新潟市などでは、地面から泥水が噴き出したり、道路が陥没したりする液状化現象の被害が甚大だ。水道、電気などのライフラインにも影響が出ている。

 研究者は、液状化は砂丘地の裾野で起きやすいと指摘し、大きな余震で被害が広がる恐れがあると警告する。引き続き警戒が必要だ。危険な場所には近付かないよう注意したい。

 ◆被災者支援に全力を

 岸田文雄首相は被災地の要望を待たない「プッシュ型支援」を活用して、食料などの必要物資の確保や医療提供、インフラ復旧など先手の被災者支援に取り組むよう指示した。

 断水や停電が続き、人工透析などの医療を提供できない病院もある。けが人が次々と運び込まれ、疲弊するスタッフを支える体制を速やかにつくりたい。

 今回の地震では、交流サイト(SNS)で悪質な虚偽情報が流布している。

 救助活動や支援の妨げとなり、人命に影響する可能性のある許されない行為だ。厳に慎んでもらいたい。

 原子力規制庁は、志賀町にある北陸電力志賀原発(停止中)1、2号機に大きな異常はなく、使用済み核燃料プールの冷却を続けていると発表した。

 北陸電によると、両号機の変圧器で配管が破損した。両号機プールの水があふれた。外部への流出はないという。

 変圧器を巡るトラブルは07年の中越沖地震の際、東京電力柏崎刈羽原発でも発生した。北陸電は原因を徹底的に調査し、公表することが求められる。

 北陸電は志賀原発の再稼働に向け、原子力規制委員会に新規制基準の適合審査を申請中だ。規制委は今回のデータを基に、志賀原発の地震・津波対策などを慎重に審査してもらいたい。

 東電によると、柏崎刈羽原発でも2~4、6、7号機プールの水があふれた。

 地震の揺れによる影響は他にないのか、詳細に点検しなければならない。