帰省客らでにぎわう首都圏の空の玄関口で、航空機同士が衝突、炎上した衝撃は計り知れない。乗客の安全と安心を守るには、徹底した原因究明が必要だ。
羽田空港で2日、札幌発の日航機が着陸した際に、滑走路で海上保安庁の航空機と衝突し、両機とも炎上した。
日航機は乗客を乗せたまま、炎に包まれた。機内にいた379人の乗客乗員は脱出し、間一髪で助かった。逃れた人は「生きていて良かった」と話した。心の底から安堵(あんど)したに違いない。
約18分間で全員が脱出できたのは、乗員が冷静に避難誘導し、乗客も適切に行動したからだろう。かけがえのない多くの命が救われたことは奇跡的だといえる。
海保機では乗員5人が亡くなり、自力脱出した機長は全身やけどの重傷を負った。
1日に発生した能登半島地震の対応で、新潟航空基地へ支援物資を搬送しようとしていた。機内には被災者向けの水や食料を搭載していたという。
被災地のために職責を果たそうとしていた乗員が逃げる間もなく命を失ったことは痛ましく、残念だ。乗員の冥福を祈りたい。
事故については、複数の専門家が、国内の空港でこれほど大きな航空機同士の衝突事故は聞いたことがないと口をそろえる。
空港の管制官が正しく指示を出し、パイロットがそれに従えば、事故は起きないように管制システムはできていると指摘する。
通常では起こりえない事故が起きたということだ。
管制と両機長のやりとりが原因究明の焦点になるだろう。
日航は2日の記者会見で、管制から着陸許可が出ていたとの認識を示した。同社の聞き取りに、乗務員は着陸許可を復唱した後、着陸操作をしたと説明している。
国土交通省は3日、日航機と海保機、管制との交信記録を公表した。管制は日航機の着陸前に、海保機に滑走路停止位置まで地上走行するよう伝えており、海保機側も同じ内容を復唱した。
海保機がなぜ停止位置を越えて滑走路に侵入したか疑問だ。
過去には無線の混信や聞き間違いでも重大事故が起きている。管制と両機の間で何が起きたのか、十分検証してもらいたい。
国交省は航空事故と認定し、運輸安全委員会の航空事故調査官は海保機のフライトレコーダー(飛行記録装置)などを回収した。日航機についても捜索中だ。
警視庁は、業務上過失致死傷容疑を視野に捜査し、東京消防庁は出火原因の特定を急いでいる。
多角的に調査、分析し、再発防止につなげねばならない。
注意を払っても、事故はいつ起きるか分からない。乗客は利用時に避難方法をしっかり確認するなど、命を守る行動を心がけたい。













