被害の全容がいまだに分からない中で、生存率が大幅に下がるとされる発生72時間が過ぎた。一人でも多くの人が救出され、被災者の命が守られるよう全力を挙げねばならない。

 石川県能登地方を震源とし、最大震度7を観測した能登半島地震による被害が拡大している。

 亡くなった人は増え続け、4日には80人を超えた。安否不明者は多数に上り、津波による行方不明者も新たに判明した。

 石川県内では全壊と半壊の建物が200軒以上確認されている。

 倒壊した建物内には、まだ多くの人が取り残されている。救出作業を見守る家族の胸中を思うと、切ない限りだ。

 能登半島周辺では3年前から群発地震が発生し、2022年6月に震度6弱、23年5月には震度6強の大きな地震があった。

 これまでの地震で半壊判定を受けていた家屋が、今回倒壊したケースもある。

 現地では余震が相次ぎ、発生から2日間で521回を数えた。

 政府の地震調査委員会は、震源断層は長さ150キロ程度の逆断層だと考えられ、地震活動は当分続くとした。震度5強や5弱も起きている。強い揺れや津波には、引き続き警戒が必要だ。

 傷んだ家の中にいて、二次被害に遭うことがないよう十分注意してもらいたい。

 地盤も緩んでいる。雨や雪による土砂災害の発生に気をつけねばならない。

 道路が寸断されて支援物資が足りていない。孤立集落も多く、道路の復旧が急がれる。

 政府は海上輸送に力を入れ、4日は海上自衛隊の輸送艦で、輪島市に土砂や倒木を撤去する重機を運んだ。5日には、食料や生活用品を積んだ国土交通省の輸送船が現地に到着する予定だ。

 海上保安庁は、輪島港や新潟空港に食料などを輸送している。海路、空路とも安全に配慮しながら必要な支援を急がねばならない。

 石川県内の避難者は3万人を超えた。避難所の生活は長引くことが予想され、冬の寒さの中で体調を崩さないか心配だ。

 特に高齢者や持病のある人は、細心の注意を払い、命と健康を守ってもらいたい。

 トイレの回数を減らそうと水分を取ることを避けて起こる脱水症や、低体温症の恐れがある。こまめな水分補給や、暖を取る対策が欠かせない。

 関連死が出ないよう配慮が必要だ。車中避難によるエコノミークラス症候群は中越地震で注目された。注意したい。

 助かった命が寒冷地の避難生活で失われることは避けなくてはならない。周囲と声を掛け励まし合って、乗り切ってほしい。