激震の中で助かった命が、過酷な避難生活で奪われる事態は何としても避けたい。厳しい寒さが続いている被災地で、避難者が命を落とさないように対策を急がねばならない。

 能登半島地震は10日で発生から10日目となった。亡くなった人は200人を超え、安否が分からない人はなお多い。

 住宅が倒壊し、ライフラインは途絶した。多くの人が避難所生活を強いられているが、収容可能人数を上回り、横になるスペースを十分確保できない場所もある。

 自家用車やビニールハウスで寝泊まりしている人もいる。寒さが体にこたえてはいないだろうか。

 国は被災地の要望を待たずに物資を届ける「プッシュ型支援」で早さを優先しようとしている。

 だが道路の寸断などで支援物資が行き届かない避難所は多い。孤立した集落も多数に上る。

 現地は山が一つ崩れるなど土砂災害が桁外れにひどいという。ルートが限られる半島という地形が救援を難しくしている。

 切ないのは、地震による建物倒壊や津波、洪水などで亡くなる「直接死」とは別に、避難生活などを原因とする「災害関連死」で亡くなる人が出てきたことだ。10日までに8人が確認された。

 被災地はこれから2月半ばにかけて一段と気温が下がる。十分な暖房がない場合、高齢者を中心に低体温症の危険性がある。

 新型コロナウイルスやインフルエンザなどが拡大し、患者が医療機関に殺到しているという。命を守るには極めて深刻な状況だ。

 関連死は過去の災害でもあり、1995年の阪神大震災以降、5千人が認定された。2004年の中越地震では亡くなった68人のうち52人が関連死だった。16年の熊本地震では200人を上回り、直接死の4倍を超えた。

 悲劇を繰り返さないために、これまでの災害で得た教訓を踏まえた対策を急ぎたい。

 車中泊や避難所生活で長時間、同じ姿勢でいると、足の静脈に血栓ができるエコノミークラス症候群になりやすい。血栓が血管に詰まると死に至る恐れがある。

 仮設トイレの配備が遅れ、避難所の衛生環境が悪化している。放置すれば感染症や脱水症状などを引き起こすリスクが高まる。

 被災者をぎりぎりまで我慢させてはならない。寒くて衛生環境が悪く、ストレスがたまる避難所に長期間、留め置くのではなく、ホテルや旅館に移す「2次避難」を急いでもらいたい。

 今回の地震では、避難所の備蓄にも課題が指摘されている。厳冬期でも着の身着のまま逃げた被災者が命を落とさずに済む備えが整っているか、本県の自治体もいま一度、避難所の点検が不可欠だ。