現時点で安全上の問題はないというが、地震でどれだけ影響を受けたのか懸念がある。判明した事象やデータを検証して従来の想定の妥当性を確認し、今後に生かさねばならない。
能登半島地震の際に石川県志賀町にある北陸電力志賀原発で観測した揺れの加速度が、設計上の想定を一部でわずかに上回っていたことが明らかになった。加速度は原発の耐震設計の目安となる基準地震動の単位にもなる。
今回の地震では、1号機地下で震度5強を観測し、加速度は旧原子力安全・保安院時代の北陸電の想定を一部で上回った。ただ、原子力規制委員会の審査では想定を引き上げている。
志賀原発は1、2号機とも停止中で大きな被害はなかったとされる。だが、震源域では複数の断層が連動したとみられる。耐震想定を改めて確認すべきだろう。
地震では設備の不具合が相次いだ。変圧器が破損し、外部電源の一部が使えなくなった。
電力各社は、送電鉄塔の倒壊などで外部電源が途絶えた東京電力福島第1原発事故を教訓に、電源の多様化を進めてきた。
しかし今回のように敷地内設備の不具合が原因で受電できない事態は想定外だったという。
絶縁油が漏れた量が後で訂正されたり、火災発生との誤情報が北陸電から規制委に伝えられたりした。情報伝達にも課題が残った。
志賀原発には地震発生直後に約3メートルの津波が到達していたことも分かった。敷地が高く、防潮壁もあり、原発への影響はなかったという。だが北陸電は当初、津波による水位変動はないとしていた。
津波の観測手法についても改善策を検討する必要があるだろう。
放射性物質の敷地外漏えいを監視する放射性監視装置(モニタリングポスト)は一部が測定不能となった。事故時の避難に欠かせない設備だ。破損の原因をしっかりと検証しなければならない。
志賀原発を巡っては、2016年に規制委の有識者調査団が1号機直下を通る断層が活断層である可能性を指摘した。だが規制委は昨年3月、「活断層はない」とする北陸電の評価を妥当とした。
今回の地震で得られる新たな知見を踏まえ、改めて判断を見直す必要があるのではないか。
地震後の規制委の会合では、委員から「専門家の研究結果を今後の審査に生かす必要がある」との意見が出た。既設の他原発の規制にも反映させるべきだろう。
今回の地震では、本県に立地する東京電力柏崎刈羽原発でも、使用済み核燃料プールから放射性物質を含む水があふれた。
県民の不安を踏まえ、東電や国・自治体には、改めて地震への備えの徹底的な論議が求められる。













