家族と離れて集団避難する生徒も、被災地に残る生徒も、安心できるようなサポートが大事だ。一人一人に目配りしたきめ細かな支援が欠かせない。

 能登半島地震で被災した石川県輪島市の中学生が、約100キロ離れた同県白山市の宿泊研修施設へ集団避難した。整った環境での学習の機会を確保する。

 対象は輪島市の全3校の中学生約400人のうち希望した258人だ。珠洲市と能登町からも21日に金沢市へ集団避難する。

 学校が避難所になるなどして授業再開の見通しが立たず、苦渋の措置といえよう。

 故郷を離れた生活に不安を感じる生徒は少なくないだろう。周囲でしっかりと支えたい。

 大規模災害で、子どもが保護者の元を離れて集団避難するのは異例の対応である。

 2000年に三宅島の噴火で東京都三宅村が全島避難した際、小中高生が旧都立高で寮生活をしたことはあった。

 当初は10日ほどで帰れるとも期待されていたが、避難期間は半年、1年、4年半と延びた。

 今回、輪島市は避難期間について23年度末を念頭に最大約2カ月と見込んでいる。ただ、石川県の馳浩知事は、4月以降も続く可能性があるとの見方を示す。

 できるだけ早く地元に戻れるよう国などは全力を挙げてほしい。

 避難期間が延びると、先が見えず、ストレスが大きくなるとされる。友達の知らなかった一面が見え、仲たがいにつながることも注意するポイントだという。

 スクールカウンセラーの役割は大きい。生徒が悩みを打ち明けやすい雰囲気づくりが重要だ。

 地元に残る生徒への支援も課題となる。慣れない地域に移るより家族と一緒にいたいとして避難所や自宅で勉強する生徒もいる。

 国は、学習用デジタル端末を無償貸与する。遠隔授業などで集団避難と同程度の学習環境を早期に整えてもらいたい。

 避難した生徒と被災地に残った生徒の間に壁ができないようにしたい。顔を合わせる機会をつくることも必要ではないか。

 避難先には輪島市など地元の教員が同行するという。教員たちも被災者であり、長期にわたれば負担が過重になりかねない。自治体を越えた応援態勢が求められる。

 親元を離れることの精神的負担が大きい小学生は、集団避難の対象にならなかった。始業時期が決まっていない学校も多く、端末や教科書の提供、仮設校舎整備などを急ぐ必要がある。

 避難所には大学受験などを控える高校生もいる。安心して試験に臨めるよう関係機関は追試会場の設定、入学金や学費の減免といった支援策に知恵を絞ってほしい。