東北、上越、北陸の3新幹線が線路を共用し、分刻みで運行する区間で起きたトラブルだ。JR東日本は影響の大きさを重く受け止め、原因究明と設備点検を急いで再発防止策を講じてもらいたい。

 23日午前、金沢発東京行き北陸新幹線が大宮-上野間を走行中に停電が発生し、停車した。東北、上越、北陸の各新幹線が通過する区間のため、東京-仙台と東京-高崎間が終日運休した。

 JR東日本は24日未明、停止車両の移動など全ての復旧作業を終えた。停電発生から約20時間後、始発から全線で運転を再開した。

 発生当日に運休した新幹線は283本に上り、約12万人に影響した。東日本から北陸にかけての広範囲で、国土の大動脈が長時間乱れた異例の事態だといえる。

 JR新潟駅では東京方面に向かう多くの人が足止めされ、仕事や大雪への不安を口にした。

 北陸新幹線の沿線周辺には能登半島地震の被災地がある。物資運搬や人材派遣など支援活動に影響が生じなかったことを願う。

 JR東によると、停電は東北新幹線の上野-小山間と上越・北陸新幹線の上野-熊谷間で発生した。係員が確認すると、さいたま市中央区で架線が約150メートルにわたって垂れ下がっていた。

 約1キロ離れた場所で、パンタグラフなどが破損、窓ガラスにひびが入った車両が停車していた。

 JR東は架線を張るための重りが破損し、垂れ下がったとみられると明らかにした。架線が垂れた後に車両が通過し、停電につながった可能性がある。

 重りは大宮-上野間の開業時から38年以上使われている。同じ設備がある約500カ所について月末までに目視で緊急点検する。

 JRは架線の摩耗や張り具合を専用車両で検査し、夜間の保守作業で詳しく点検している。

 通常の列車に機器を搭載し、検査頻度を上げる取り組みも進んでいると指摘する識者もいる。トラブルの予兆を早めにつかむ方策が求められよう。

 注目したいのは、JR東は2020年に故障リスクが低い新型架線の導入と張り替えを決めたが、現場付近は従来型の架線から張り替えていなかったことだ。

 新幹線としては低速で通過する区間のため、架線に大きな負荷がかからず、より高速の区間から優先して張り替えていたという。

 破損箇所を調べ、新型架線ならトラブルを防げたかどうかを解明する必要がある。

 3月のダイヤ改正で、JR東は上越新幹線下り最終列車の発車時刻を20分繰り上げる。耐震化や老朽化対策など夜間の作業時間を拡大するためとしている。

 東京での滞在時間が減るなど、利用者が不便を強いられる面もある。徹底した保線で運行の安全を確保しなくてはならない。