復旧の遅れで避難生活の長期化が懸念される中、これ以上の「災害関連死」は防がなければならない。不運にも関連死に至ってしまった原因を検証しながら、救える命を守る体制を官民挙げて整える必要がある。
能登半島地震の災害関連死について、石川県は関係市町との合同審査を行い、3市町の30人を認定することを決めた。地震発生から4カ月半がたって初めての関連死認定となる。
災害関連死は避難生活や環境変化のストレスから体調が悪化して亡くなり、災害が原因と認められるものを指す。建物崩壊や津波などが原因で亡くなる直接死と異なり、災害から生き延びることはできていた。
能登半島地震では直接死の人が230人に上っており、関連死と合わせた犠牲者は現時点で260人となる。各市町には計100人以上の関連死の認定申請があり、今後さらに増える可能性がある。
液状化被害が多発した新潟市でも、震災後に亡くなった2人の遺族から相談が寄せられており、市は審査委員会を設ける方針だ。
元日に発生し、極寒期に慣れない生活を強いられた能登半島地震の過酷さに改めて胸が痛む。
関連死が直接死と決定的に違うのは、対応次第では救える命であったということだ。
2004年に発生した中越地震では、亡くなった68人のうち52人が関連死だった。
16年の熊本地震では、関連死が直接死の4倍を上回る221人に上った。うち約8割は70代で、高齢者へのケアの必要性が課題として浮かんだ。
能登半島地震では断水が解消しないなどインフラの復旧が遅れている地域があり、今なお2100人超が1次避難所にいる。
トイレ不足などの中で過ごす長期間の避難生活により、疲労が蓄積している被災者も多いに違いない。能登地域の避難所から4カ月間で771人が救急搬送されたという調査もある。
助かった命が、ここで失われるようなことがあってはならない。
避難所の環境改善や衛生面の対策などで関連死は防ぐことはできる。心のケアも重要だ。今後は熱中症対策も必要となる。
行政と民間が力を合わせ、関連死を防ぐ対策を最優先で進めてもらいたい。
なぜ関連死に至ったのか、原因の検証も欠かせない。詳細に調べて共有し、関連死を生まない体制整備につなげなければならない。
関連死を認定する審査会について、国は市町村に設置を条例で定めるよう努力義務としているが、備えは進んでいない。いつ、どこで災害が起きても不思議ではない。準備をしておく必要がある。