県振興局談合事件について、新潟日報社の情報公開請求に対して公開された文章。黒塗り部分が多い
県振興局談合事件について、新潟日報社の情報公開請求に対して公開された文章。黒塗り部分が多い

 新潟県新発田地域振興局農村整備部の官製談合事件新潟県新発田地域振興局が発注した農地区画整理工事の入札を巡り、業者に予定価格を事前に漏らしたとして、振興局の農村整備部長(当時)が官製談合防止法違反などの疑いで2023年9月に逮捕された事件を受け、歴代の同部長らに県が聞き取った内部調査について、新潟日報社が県に情報公開請求を行い、開示された文書は55ページあったが、このうち黒塗りがなかったのは6ページだけだった。個人情報に該当しないとみられる部分でも広範囲が塗りつぶされていた。県は「開示できる部分は最大限した」と説明するが、不開示の理由が不明確な部分も多く、「のり弁当」状態の文書からは情報公開に後ろ向きな県の姿勢も浮かぶ。(報道部・安達傑)

 新潟日報社が「聞き取り調査の記録全て」の公開を求めたのは6月。通常は15日以内に公開するかどうか決定されるが、最終的に開示までには約3カ月かかった。時間を要した理由について、県は「デリケートな内容の事情聴取を含み、一つ一つ判断の議論が必要だった」と説明した。

 開示されたのは、逮捕された当時の部長、歴代部長経験者、現職の新発田地域振興局農村整備部職員、現職の本庁幹部職員への聞き取り結果など。そのうち、ほぼ全面開示だったのは振興局の現職職員への調査結果のみだった。

 全容解明に最も重要な歴代部長経験者9人の聞き取り内容を見ると、質問項目の一部が全文黒塗りされ、何を聞いているか分からない状態だった。「再発防止への提言」に関しては回答部分が全員共通して塗りつぶされていた。

 この2点について、非公開の理由は、いずれも県の情報公開条例の条文を引用する形で「事務または事業の適正な遂行に支障を及ぼす恐れ」と記されていた。当初、県人事課は「率直な心情に基づき、答えてもらった。詳細を明かすと、今後、同様の問題の際に答えてもらえなくなる」などと理由を説明していた。

 だが新潟日報社は、非公開理由が不明確だと県にあらためて指摘。人事課の榎新二課長は21日、記載不足を認め、「精査したところ、非公開理由の記載に不足があったのは確かだった」と述べた。

 県情報公開条例は行政文書の「原則公開」を掲げるが、県の姿勢を巡っては、過去にも「隠蔽(いんぺい)体質」や「恣意(しい)的運用」が指摘される事案があった。

 2016年に発覚した県が医療・福祉関係の四つの法定計画を策定していなかった問題では、新潟日報社が未策定となった経緯を調べるため、関連資料を公開請求した。当初は多くの文書が非公開とされた。このときも非公開理由の記載が十分でないとされ、県の審査会は「今後は非公開の理由をできるだけ具体的に記載すべきである」と県に答申。文書は18年に公開された。

◆過剰に不開示にしている印象(NPO法人「情報公開クリアリングハウス」三木由希子理事長)

 基本的に2月時点で公表した内部調査結果、つまり県としての「結論」に沿う内容しか開示されていないと感じる。県として出せるものは出したのかもしれないが、過剰に不開示にしている印象を受ける。

 そもそも不開示の理由が情報公開条例の条文を引用しただけで具体性がない。最高裁の判例でも条文を示すだけでは不十分とされている。不開示が妥当なのかどうかの判断ができず、著しく問題がある。都道府県レベルでよくこれで決定を出したな、と思うほどだ。

 過去の部長経験者は違法性を認識しながら情報を漏らしていた。周囲で見聞きしたのではなく、まさに当事者だ。一般的な聴取とは違う。逮捕された元部長が明らかにしているような事実関係は開示されるべきだろう。公務員としての説明責任がある。

 聞き取り結果には...

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