
ルール無用の「怪獣」に攻められる矢口壹琅。子どもや外国人にも楽しんでもらいたいと「怪獣プロレス」を考えた=2025年7月、横浜市鶴見区(撮影・堀誠)
子どもの頃、東京・浅草で暮らしていた矢口壹琅(やぐち・いちろう)は近所の体育館でプロレスを見た。見せ物小屋の闇の中で味わった、好奇心と恐怖がない交ぜになったような感覚を覚えた。小柄な選手が巨体の相手を倒す技に圧倒された。それ以来、プロレスの魅力に取りつかれ「自分もプロレスラーになりたい」と夢を抱いた。
3歳で母親を亡くした。伯父が育ててくれたが、10歳の時に離婚。伯父の妻だった女性に連れられ、東京から千葉へ。中学生になると柔道を始めた。オリンピックに出場し、プロレスラーへの道を切り開こうと思った。
高校生の時、「鬼の木村」と呼ばれた木村政彦(きむら・まさひこ)(1993年死去)と柔道の稽古を...
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