インドの都市部住民とモーリシャスのHIV陽性者でNLRなどの医療指標を比較研究
ジーエヌコーポレーションの関連会社であるメディニッポン・ヘルスケア(インド)、及びビーウェル病院(インド)が行った研究で、南インド都市部の住民のうち、好中球リンパ球比(NLR)が高い集団の分析を行ったところ、世界基準より若いうちから免疫老化が起こっている可能性があることが確認されました。先にソウル・シナジー(モーリシャス)とNCRM日印再生医療センター(インド/モーリシャス)が共同で実施した研究においては、モーリシャスのHIV陽性者集団でNLRの上昇が20代前半から認められており、ジーエヌコーポレーションは、これら2つの集団の比較研究結果を2025年9月に熊本市で開催された国際実験血液学会(ISEH) 第54回年次学術集会で発表しました。
インドでは、2014年から2024年にかけてチェンナイ都市部にあるビーウェル病院を受診した患者に対し遡及的評価を行ったところ、炎症と免疫システムの老化を示すと考えられているNLRが40歳を境に急激に上昇し、特に男性で顕著な上昇が認められることが明らかになりました。当該集団においては、糖尿病、代謝異常、心血管合併症、がんの発症等を引き起こす慢性的な低度の炎症がある可能性が指摘されています。「これら代謝疾患の発症を遅らせて健康寿命を延ばすためには、40歳になる前、20代後半から30代に予防を開始すべきだと思われる」と、筆頭研究者であるビーウェル病院会長 C. J. Vetrievel医師は述べています。
一方、モーリシャスでは、モーリシャス国立エイズ事務局と連携し、HIV陽性者における免疫バイオマーカーの比較評価を実施しました。その結果、HIV陽性者では、NLRが20~29歳でピークに達し、その後も持続的に高い値を維持することが明らかになりました。当該集団における免疫調節異常の早期発症を示すものであり、HIVケアにおける免疫介入のタイミングを考える必要があると研究者らは指摘しています。
学会では、これらの集団へのNLRの上昇を抑える早期介入の実施とともに、有効な治療法の1つと考えられる日本のNK細胞の免疫療法についても提案がなされました。ただし、この治療法は日本の再生医療に関する法律に基づき臨床応用が認められているため、インド及びモーリシャスそれぞれの対象集団に適合させるには、患者ごとの投与のタイミングや回数などについてさらなる研究が必要だとしています。
モーリシャスの保健局長である Ashwamed Dinassing医師は、2022年から2023年にかけて訪日した際、厚生労働省再生医療課チームと面談を行っており、日本の「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」への関心と理解を示した上で、このNLRの研究がモーリシャスの免疫学分野に大きく貢献する可能性があり、適切な医療介入によって対象となる人々の健康寿命が延びることを期待している、と述べています。