多くの人が避難所での生活を余儀なくされている。猛暑の中、土砂が入り込んだ家屋の片付けや集落の復旧作業が進む。

 被災者は疲労がたまっているだろう。体調を崩さないか心配だ。関係機関は被災者の生活再建が一刻も早く進むよう、全力を挙げて取り組んでもらいたい。

 新潟地方気象台によると、下越北部では11日にかけ激しい雨が予想される。地盤が緩んでいる場所もあり、土砂災害や浸水、河川の増水には十分な警戒が必要だ。

 県北地域に甚大な被害を出し、村上、胎内両市と関川村に災害救助法が適用された県北豪雨は降り始めた3日から1週間がたった。

 9日午後1時現在、村上、関川両市村で108人が公民館や中学校に避難している。

 県の集計によると、損壊した住宅は18棟程度。住宅浸水の被害は広範囲で、新潟市、新発田市、阿賀町を含めて床上746棟、床下1014棟に達している。

 ライフラインの復旧は進んできたが、給水車が出動する地区もある。家屋や施設にたまった泥を片付けるには水が欠かせない。水道の完全復旧を急いでほしい。

 村上市は100棟をめどに仮設住宅を用意する。早ければ10日に被災者の意向を聞き始める。速やかに入居できれば被災者は安心できるだろう。

 作業中の熱中症をはじめ、新型コロナウイルスなどの感染症を防ぐことも重要だ。住民やボランティアは声をかけ合い、健康管理に努めてもらいたい。

 再開を急ぎたいのは地域の高齢者が利用する医療・福祉施設だ。

 建物まで電気が通じても設備が故障し、エレベーターの復旧に数カ月かかる見込みの施設もある。

 再開のめどが立たない関川村のデイサービス施設は「介護度が高く、家で入浴できない利用者も多い。早く復旧したいがどうにもできない」と肩を落とす。

 復旧には専門技術者による作業が欠かせない。行政と関係組織・団体、事業所は連携して、高齢者らの健康を守ることを最優先に対処してもらいたい。

 県と市町村職員による災害支援の「チームにいがた」も現地入りし、建物被害認定調査などの活動を始める。これまでの経験や知識を生かす時だろう。

 国県道などの幹線道路はもちろんだが、生活道路の復旧も急ぎたい。土砂が堆積して家財の運び出しなどが困難な地区がある。

 多量の流木がたまった砂防ダムもある。下流の集落に住民が戻れるよう安全対策を講じてほしい。

 線路が流されたJR米坂線(坂町-今泉)は運転見合わせが続く。赤字路線なだけに地元に不安がある。JRは復旧への見通しを早急に示してもらいたい。

 55年前の羽越水害では県内で134人の死者・行方不明者を出したが、今回の県北豪雨は負傷者1人だけだった。

 実際の避難の中で羽越水害の教訓がどう生かされたのか。日頃の防災意識とともに検証し、被害をなくすため今後につなげたい。