今年の夏には参院選が控える。岸田文雄内閣の「中間テスト」とも言える重要な節目になるが、新潟選挙区(改選1議席)では、立憲民主党現職の森裕子氏(65)と自民党新人で県議の小林一大(かずひろ)氏(48)が名乗りを挙げ、与野党対決の構図となりそうだ。
2015年7月成立の改正公選法で、参院選新潟選挙区は改選2議席(計4議席)から改選1議席(計2議席)に減少。その後、参院選は16年と19年と2回行われているが、いずれも自民党候補と野党統一候補による事実上の一騎打ちとなり、野党統一候補が勝利を収めた。
勝ったのは現在、立憲民主党に所属する森裕子氏と打越さく良氏だ。このため参院選新潟選挙区の全2議席を立民が独占している。
◆立民・森氏 「力を合わせて」強調
立憲民主党県連の幹部が集まる常任幹事会が昨年12月24日夜、新潟市内で開かれた。議題の一つは22年の参院選。現職の森裕子・党参院幹事長を新潟選挙区の公認候補とするよう党本部に申請することを決めた。
幹事会後、報道陣の前に立った森氏は短いコメントの中に決意をにじませた。「みなさんに力を貸してもらい、力を合わせて頑張るしかない」
参院選新潟選挙区で、野党の勝敗を左右するのは、共産党を含む野党共闘の在り方だ。
4選目を目指す森氏は前回の16年参院選で、本県初の、共産とも連携する野党共闘を組み、自民党候補を破った。票差は2279票。同選挙区で毎回、5万票以上を獲得していた共産候補が立たず、共闘に加わったことが奏功した。
17年、21年の衆院選とも県内小選挙区で野党統一候補が自民に勝ち越した。19年参院選も野党統一候補の新人が自民現職を4万票以上も差を付けて破った。
本県野党勢力にとって、共産が候補を出さないという形での共闘は「勝利の方程式」になっていた。
ただ、21年の衆院選を契機に、野党第1党の立民は共産との連携について再考を迫られている。選挙戦で共闘を前面に出した結果、惨敗したためだ。
立民は泉健太・新代表の下、衆院選での野党共闘について検証することにしている。立民の西村智奈美幹事長(新潟1区)は新潟日報社の取材に、参院選1人区での候補一本化は必要とした上で、共産を含む共闘は「これからどうしていくのかという段階なので、方針として言えることはない」と言葉を選ぶ。
共産と距離を置く国民民主党の参院選対応も見えない。国民県連代表代行の上杉知之県議は「党の方針などを踏まえる。対応は決めていない」と述べる。
立民、国民のこうした姿勢の背景には、両党の最大の支持団体で、共産への拒否感が強い労働団体、連合の存在がある。
連合新潟の牧野茂夫会長は「衆院選の時のように自民側に『立憲共産党』などと言われないようにしてほしい」とくぎを刺す。ただ連合新潟内にも、参院選は「共闘しなければ勝てない」との声も漏れる。
一方、共産県委員会の樋渡士自夫委員長は従来の共闘路線の継続を訴える。「言いたいことはこちらもたくさんあるが、それを持ち出さないのが共産のスタンスだ」
決選まで残り半年余り。どう共闘の枠組みが整理されるのかが注目される。
◆自民・小林氏 知名度向上に注力
「来年の参院選に立候補を予定している新潟市秋葉区選出、小林一大県議です」
昨年12月中旬、新潟市中央区のJR新潟駅前で行われた、北朝鮮による拉致問題の早期解決を訴える街頭演説。小林氏がマイクを握ると、司会の同僚県議はすかさず声を張り上げ、こう紹介した。
小林氏自身も県内各地での街頭演説や個人演説会などの度、参院選に立候補を予定しているとの自己紹介を欠かさない。次期参院選新潟選挙区の自民公認候補に決まった昨年7月以降、自民を支持する団体や企業を中心に、あいさつ回りも重ねている。
県議4期目で党県連幹部である政務調査会長を務めているとはいえ、地元以外で名前と顔が知られているとはいえない。全県選挙の参院選だけに、全県的な知名度向上が目下の課題だ。
そんな小林氏にとって頼みの綱は、同僚の自民県議をはじめとした「県内各地の仲間たちとの連携」だ。
県議らは自らが地盤とする地域で小林氏のポスターを張っているほか、自身の支持者らに小林氏を直接紹介している。「当面、スケジュールに空きがない」(小林氏)ほどだという。
小林氏を国会に押し上げようという士気の高さの背景には、自民県議団としての悲願がある。
参院新潟選挙区は改選2議席(計4議席)時代、県内の自民にとって「県議の指定席」と言われた。しかし、改選1議席(計2議席)に減った2016年の参院選で県議出身の自民現職が野党共闘候補に敗れて以来、輩出できていない。
県連幹事長の小野峯生県議は「できれば県議から国会議員を出したいという思いはある」と語る。さらに19年の参院選新潟選挙区でも敗れ、2議席を立憲民主党に独占されており、議席奪還が至上命令だ。
ただ、県内の自民は今、県民の厳しい目にさらされている。自民の泉田裕彦衆院議員(比例北陸信越)が昨年10月の衆院選を巡り、星野伊佐夫県議から「裏金を要求された」と主張している問題のためだ。
泉田、星野両氏の主張が食い違う中、県連は昨年末に星野氏から出された離党届を受理した。一方、地元・自民支部の多くが、泉田氏を次期衆院選の公認候補としないように求めている問題については宙に浮いたまま越年となった。
問題が長引けば、党への不信感を拭うことが難しくなる可能性もある。小林氏は参院選への影響を認めざるを得ないとしつつ、「とにかく目の前の活動に専念するしかない」と話す。