倒壊した建物のがれきの下に、なお多くの人々が取り残されている。雪が降り、氷点下にもなる厳しい寒さの中で、一人でも多くの人命を救出するために、国際社会は結束しなくてはならない。
トルコ南部で6日午前4時17分(日本時間同10時17分)、マグニチュード(M)7・8の地震があり、甚大な被害が出た。かねて警戒されていた長大な活断層の活動だった可能性がある。
被害は隣国のシリアにも及ぶ。両国の犠牲者が時間を追うごとに増えていることに胸が痛む。
建物の下敷きになるなどして身動きが取れなくなった場合、72時間がたつと生存率は急低下する。
行方不明者の救出は時間との闘いで、一刻の猶予もない。国境を越えた支援が不可欠だ。
各国からトルコに対し捜索・救援隊の派遣が相次ぎ、日本政府も国際緊急援助隊・救助チームを派遣した。各国の救援隊には連携して救助を急いでもらいたい。
現地では新たにM7・5の地震が起きるなど、大きな余震が断続的に発生している。
耐震対策が不十分な建物も多いとみられ、さらに倒壊する危険性をはらむ。二次災害に遭わないよう十分注意し活動してほしい。
震災の恐怖に震える人たちに、冬の厳しい寒さが襲いかかっている。食料や水、毛布といった救援物資とともに、暖を取れる住まいの確保が急務だ。この点でも国際社会の協力が欠かせない。
懸念するのは、トルコと同様に深刻な被害が出ているシリアに支援が行き届くかどうかだ。
シリア北部や北西部は2011年から続く内戦で激しい戦闘が起き、内戦から逃れた多数の避難民が、地震に襲われたトルコとの国境周辺に身を寄せている。
シリア内戦でアサド政権の後ろ盾となったロシアのプーチン大統領は、アサド大統領と電話会談し、地震の救助要員派遣を決めた。
しかし北西部は反体制派の拠点のため、被災者がアサド政権の支援を受けられない恐れがある。
戦時下の地域で救援活動を進めるのは難しい。内戦で過酷な環境に置かれている人たちに、災害が追い打ちをかけている。
国連のグテレス事務総長は緊急支援を表明して国際社会に援助を呼びかけ、内戦下の被災にも懸念を示した。各国は対立することなく、人道支援を届けてほしい。
世界有数の地震国であるトルコと、地震大国の日本はこれまでも相互支援を重ねてきた。
東日本大震災ではトルコの救助隊が宮城県で不明者の捜索に当たり、派遣期間は震災直後に活動した外国救助隊で最長となった。
地震被害は人ごとではない。その困難を私たちは身をもって知っている。募金など自分にできる救援方法で、災禍に苦しむ人たちに心を寄せたい。