西洋文化に触れた色調

 古い椅子に置かれたバイオリンなどの楽器、花が生けられた花瓶と時計-。「画業50年 池乘(いけのり)美奈子展-穏やかな時のなかで-」が、NSG美術館で開催される。モチーフの基本は変わらない。それぞれのモチーフの細密な表現とともに計算された配置と構図、何より作品の品格を高めているのはその色使いであろう。古色を感ずる色調は西洋の地を旅して、歴史や文化に触れて感動した人にしか表現できないものである。

 画業50年の作品それぞれに、作家の時々の心模様を映す調べが聞こえてくる。楽器は時に池乘さん本人のようにも思える。作品の背景に点描が多用されている。和音にも似ている幾つかの色の重なりが、結果としてその絵の...

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