共生社会の実現願って

 北海道の白老(しらおい)町に、国立アイヌ民族博物館と、国立民族共生公園からなるウポポイ(民族共生象徴空間)が2020年7月に開業して4年になる。

 以前、北海道を旅した際に、乗り合わせた電車の中でこちらを必要以上に意識した、どこか異なる容貌の若者の視線を感じた。今もその視線が忘れられない。

 「アイヌ神謡集」を著したアイヌ人女性、知里幸恵(ちり・ゆきえ)が19歳で世を去って、今年で102年がたつ。彼女は絶滅の危機に瀕(ひん)していたアイヌの伝統文化を救った。

 中野雅友と聞くと、洋画家で「アイヌ・ユーカラ」シリーズを半世紀以上にわたってテーマとする日展作家として知られている。旧白根出身の氏とアイヌ...

残り823文字(全文:1123文字)