温かい絆で影響し合い
この作家は日本人以上に日本の心を分かっていたのではないか。モーリス・ドニの作品を見ていると、時々そう思わされることがある。
たとえば、歌麿の描く女性像をドニは深く愛していた。「美しさはものの単純化にある。歌麿をごらんなさい」「歌麿はたった1本の線で体のボリュームを感じさせる」とドニは弟子に語ったという。感受性が柔らかな10代の頃から日本美術に親しんでいたこともその理解の深度を増したのだろう。
西洋絵画とは異なる余白を研究し、東洋的な線の中に新たな表現力を見出した。そうして培われた画力はドニ自身の中で血肉化され、長い年月の間に溶け込んで見えなくなったとしても失われることはなかった。
現在、県立近...
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