南魚沼市の割引沢で行った県警山岳遭難救助隊の訓練。要救助者に見立てた隊員(中央)の体を支えて救助する
南魚沼市の割引沢で行った県警山岳遭難救助隊の訓練。要救助者に見立てた隊員(中央)の体を支えて救助する

 心地よい風、沢のせせらぎ、頂上まで登り詰めたときの達成感-。登山で味わう感動は何物にも代えがたく、老若男女問わず多くの人を魅了する。その一方で山は、一歩間違えば命まで落としかねない危険な場所でもある。毎年、多くの山岳遭難が発生する新潟県警南魚沼署管内(南魚沼市、湯沢町)で、命を守るために活動する救助隊の実態と、山で遭難しないための方法を探った。(魚沼総局・小林史佳)

 日本百名山の一つ、南魚沼市の巻機(まきはた)山(1967メートル)は、毎年大勢の登山者でにぎわう。美しい景観の中でスリリングな沢登りを楽しめることも魅力だ。登山者を引きつける沢登りだが、一般向けのコースと違い足場の悪い急な岩場が続く。当然、事故も起きやすい。山岳救助の現場では、沢での事故に備えた訓練が欠かせない。

 10月22日午前6時、ロープやハーネスなど救助に必要な物資を背負った男性6人が、巻機山麓の登山口から山に入り、標高872メートルの割引沢を目指した。

 6人は「新潟県警山岳遭難救助隊(山遭隊)」のメンバーで、南魚沼署に勤務する。この日は「迷ったり、けがを負ったりした登山者を捜索し、救助する」との想定で、救助訓練に取り組んだ。

 一行は足元の悪い未整備の道を進み、30分ほどで訓練現場の割引沢に到着。すぐに装備品を解き、救助のための準備作業を始めた。

 山遭隊は山岳遭難が発生した際、地上から救助に当たる。県警の警察官40人で構成し、南魚沼署の6人をはじめ、県内各署に配置されている。

▽訓練に「これで十分」はない...

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