物価高が追い打ちをかけ、困窮世帯の苦境が深まっている。憲法が保障する健康で文化的な最低限度の生活を営めるよう、政府は個々の厳しい現実を見つめ、柔軟に支援する必要がある。
厚生労働省の公表データを共同通信が分析したところ、2024年度上半期(4~9月)の生活保護申請は13万3274件で、前年同期より2・8%増えたことが明らかになった。
新型コロナウイルス感染拡大で景気が悪化した時期や、コロナ禍に伴う特例的な生活支援が縮小され、低所得者層が打撃を受けた時期を上回る申請件数だ。
食費や光熱費など、長引く物価高で家計が圧迫されて苦しむ世帯が増えたとみられる。
賃上げの効果が困窮世帯に届かず、生活保護に頼らざるを得なくなったとする指摘もある。
政府は物価高に対応するため、23~24年度に生活保護費に1人当たり月千円を特例加算した。25年度はさらに500円上乗せし、月1500円とする方針だ。
当面の生活支援策として非課税世帯に3万円を支給し、子ども1人当たり2万円上積みする。
だが実際の物価上昇に見合うだけの引き上げ幅なのか、疑問だ。
総務省が発表した24年11月の全国消費者物価指数によると、生鮮食品を除く食料は前年同月比4・2%上がった。コメ類は63・6%上昇した。電気代が9・9%、ガス代は5・6%上がった。
生活保護を受給している世帯の55%を占める高齢者は、若い人より職探しが難しく、体調によっては就労できない。
弁護士らによる相談会には、「ガスや水道が止まった」「暖房を使えない」といった切実な訴えが相次いでいる。「年金額が低く、3万円では焼け石に水」との嘆きも聞こえる。
生活必需品の値上がりは低所得者ほど影響が大きくなる。政府は実態をきちんと認識すべきだ。
最低限度の生活を保障するためにも、生活保護費が最後の救済措置として適切かどうか、検証しなくてはならない。
困窮者は高齢者のみならず、現役世代にも広がっている。
ひとり親世帯は子どもの急な病気への対応などから正社員雇用の壁は厚く、不安定で低賃金の非正規雇用になりがちなことも、困窮に拍車がかかる背景にある。
食料配布などで困窮家庭を支えているNPO法人やボランティアの力は大きい。精神的な支えにもなっている。
とはいえ、民間の支援には限界があるだろう。政府は公助の在り方を改めて考えてほしい。
生活保護を受給する手前で、ぎりぎりの生活をしながら踏ん張っている人々がいる。こうした世帯にもきちんと目配りしたセーフティーネットの構築が求められる。