子どもたち一人一人に合った学びにつながってほしい。一方で、教員の負担増とならないか心配もある。現場が混乱することがないように、備えてもらいたい。

 中教審の作業部会は、デジタルを紙と同じ正式な教科書と位置づけることを了承した。次期学習指導要領が小学校で全面実施される予定の2030年度からの導入を想定しており、デジタル教科書も検定や無償配布の対象となる。

 作業部会の審議まとめでは、紙とデジタルを組み合わせた「ハイブリッド」も認め、教科書を紙、完全デジタル、ハイブリッドの3種類から教育委員会が選ぶことになるという。

 タブレット端末やパソコンに表示して使うデジタル教科書では、文字の拡大や読み上げ、音声や動画の再生などができる。

 デジタル教科書の導入が、それぞれの児童と生徒の特性に応じた学びの充実や、興味関心を持つ題材への学習を深めることにつながると期待したい。

 教育現場のデジタル化は文部科学省のGIGAスクール構想などにより進められてきた。小中学校では1人1台のタブレット端末かパソコンが配備されている。

 19年度から小中高の授業で、紙の教材と同一の内容に限り「代替教材」として扱うようになった。

 活用の動きを、子どもたちは肯定的に受け止めているようだ。

 文科省が24年に実施した委託調査では、児童生徒の61・2%が「いろいろな情報を集めやすい」とし、53・2%が「図や写真が見やすい」と回答した。

 ただ、実際に現場で活用が進むかは見通せない。

 財務省の調査では、代替教材としてデジタル教科書が使えるようになってからも、現場の教員は使い慣れた紙の教科書を志向する傾向が強いという結果が出た。

 教員の年代などによって、デジタル教材の使用状況に大きなばらつきがあるとも指摘されている。

 全ての子どもたちに、発達段階に応じた適切な指導が担保されるのか、気がかりだ。

 紙とデジタルのどちらかに偏るのではなく、双方を学びや発達の段階に応じて使い分けることで、より大きな効果が期待できる。

 例えば英語の授業でも、発音の練習などではデジタルを用い、会話の実践のように、相手の表情を見るなどコミュニケーションを重視する場面では紙を使うといった工夫が考えられる。

 理想的な使い分けの方法を見つけ出すためには、実践と議論を重ねる必要があろう。

 近年、教科書の内容や分量が大幅に増加している。教員の長時間労働も改善していない。その上、デジタルの活用に向けた取り組みが増えることで、現場の教員にとって過度な負担にならないか、注視しなければならない。