越後の人への呼びかけ
短歌を詠む科学者は多い。アララギ派の代表的歌人・斎藤茂吉は精神科医であったし、物理学者・湯川秀樹も歌を詠んだ。研究と作歌の割合はさまざまだが、彼らは最先端の研究に従事しながら歌を詠んでいる。
新潟県旧高田町(現上越市)生まれの応用微生物学者・坂口謹一郎(1897〜1994年)も、その一人である。坂口は、1975(昭和50)年の宮中歌会始で天皇陛下に招かれて歌を詠む「召人」を務め、次の歌を詠んだ。御題は「祭り」。
いそしみていや醸(か)み継がむにひなめのまつりのにはのしろきくろきを
新嘗(にいなめ)祭に供えられる、しろき(白酒)・くろき(黒酒)を造ることから始まった発酵の学問をますます究め、盛...
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