ノイズム2の定期公演で振付家デビューを果たす樋浦瞳さん=新潟市中央区の市民芸術文化会館
ノイズム2の定期公演で振付家デビューを果たす樋浦瞳さん=新潟市中央区の市民芸術文化会館

 新潟市民芸術文化会館(りゅーとぴあ)専属舞踊団「Noism Company Niigata(ノイズム)」の研修生でつくる「ノイズム2」の定期公演が3月8、9日に同劇場で開かれる。今公演で振付家デビューを果たすのは、プロカンパニー「ノイズム1」現役メンバーの樋浦瞳(あきら)さん(29)=新潟市中央区=。ノイズム1では初めて、かつ唯一の新潟県出身者だ。新作や舞踊家としての思いなどを聞いた。

 準メンバー時代を含め、ノイズムに所属して5年目。新潟市で開かれた金森穣・芸術総監督が審査員を務めるワールドダンスコンペティションに「自分の踊りを見てほしい」と挑戦。ノイズム賞を受賞し、その後オーディションを受けて入団した。「高いレベルで体で会話しながら稽古が行われる様子に刺激を受けている日々」だ。

 踊りを始めたのは4歳で、母に連れられ、モダンダンス教室に通ったのがきっかけだった。動物への変身遊びなどを楽しむところから始め「自分ではない何者かになれるところ」に踊りの魅力を感じた。プロになって、「自分に向き合う中で自分の知らない自分に出会えるところ」にも面白さを感じる。

「若い舞踊家が一瞬を大切に踊っていくさまをぜひ、多くの人に見てほしい」と語る樋浦瞳さん

 ノイズムとの出会いは中学3年。2011年の東日本大震災チャリティー公演で、金森監督が初めてノイズム2のために振り付けした「火の鳥」を鑑賞した。躍動する舞踊家たちの姿に「こんなに人間の体ってすごいんだ」と衝撃を受け、「この日のことを忘れずに生きていきたい」と当時強く思ったことを覚えている。その後、何度も公演を見に行った。入団後に再演を見て「人間の体はこんなにも感情を動かすことができる」と新たな感動もあった。

 今回の公演は2の代表作でもあるこの「火の鳥」と、ノイズム1の2人が演出振付を手がける各新作の計3作品となる。昨年、振付家デビューした中尾洸太さんの「It walks by night」、樋浦さんの「とぎれとぎれに」。思い入れのある作品とプログラムで並べることができ、「とてもうれしい」と話す。

ノイズム2メンバーに振り付けのイメージを伝える樋浦瞳さん=新潟市中央区の市民芸術文化会館

 設立20年を昨年迎えたノイズムについて「地元に舞踊に専念できる環境や舞踊を突き詰めていこうとする人たちがいることは、すごく誇り」と語る。個人的に母校の新潟明訓高校などでワークショップを行ったこともあり、「自分もダンスを頑張る後輩たちを刺激できるような存在であれたらうれしい」とほほ笑む。

 作品のテーマは「一つ一つの命は途切れても世界は大きな流れで続いていくということ、そしてその途切れてしまう命が影響を与えながら世界が続いていくということ」。生命が生まれる前の光景をイメージしながら創作した。

 舞踊家として日々自身の体と向き合い、磨いていく中で、以前から抱いてきた問いに迫る試みだという。「なぜ自分がこの体で生まれてきたのか、ダンサーたちがなぜその体で生まれてきてその体とどのように付き合って生きていくのかを、踊りの中で表現していけたら」

 「振付家として無名の自分にとって、チャンスが与えてもらえるのは本当にありがたい」。一メンバーとして練習もしながらの挑戦だ。

樋浦瞳さんが演出振付を手がけるノイズム2公演の新作「とぎれとぎれに」の公開リハーサル

 振り付けは、ノイズム独自の身体技法で培った身体性を生かす。同じ空間でしか感じられない緊張感や息遣いがあるとし「すごい体がそこにあるという感覚、体験としてそこに息づいている舞踊家を感じられるような演出にしたい」。舞踊は同じ作品を同じ振り付けで踊っても、二度と同じ瞬間は訪れないことから、その「一回性を表現したい」と、巨大な紙を使う演出にも注目してほしいと話す。紙には生命の源泉のイメージも重ねている。

 公演で上演される3作品はそれぞれ全く違った演出振付になる。「コンテンポラリーダンスが難しいと感じる人も、こうのは好きかもしれないと感じられる場になったらうれしい。若い舞踊家が舞台上で一瞬を大切に踊っていく様をぜひ多くの人に見ていただきたい」

◎ひうら・あきら 1995年、新潟市西区生まれ。新潟明訓高校ダンス部を経て筑波大体育専門学群卒。東京都内でフリーのダンサーとして活動後、2020年からノイズム1準メンバー、21年からノイズム1に所属。

◆公開リハーサルで見せた「全く異なる世界観」

 2月28日には、...

残り1663文字(全文:3259文字)