沿岸の多くの人が不安な一日を過ごすことになった。今後大きな余震が起きる可能性もあり、引き続き警戒しなければならない。

 身の回りの防災対策についても十分か改めて考えたい。

 30日午前、ロシア・カムチャツカ半島付近を震源とする地震が発生した。気象庁によると、地震の規模はマグニチュード(M)8・7と推定される。

 気象庁は北海道から沖縄県までの広い範囲に津波警報と津波注意報を出した。岩手県の久慈港で1メートルを超える津波が観測されるなど、22都道府県に到達した。

 北海道浦河町が警戒レベルで最高の「緊急安全確保」を発表した。避難指示と合わせると対象は全国で一時約200万人となった。

 津波の際には迅速に逃げることが重要だ。どれだけの人が行動に移せただろうか。

 高台に避難する車で渋滞が発生したほか、海水浴客への呼びかけなどに課題も残った。

 事態が落ち着いた後、実際の避難行動などを検証し、観光客を含め、あらゆる人の安全をどう確保するのか考えたい。

 JR北海道などが運転を見合わせたほか、道路の通行止めが起きた。宮城県の仙台空港は全ての滑走路の使用を一時中止するなど、交通機関にも影響した。

 警報が続き、多くの人が猛暑の中、長時間の避難を余儀なくされた。避難先で体調を崩すことのないように対策が求められる。

 地元当局によると、カムチャツカ地方南東部で3~4メートルの津波が観測されたほか、建物などにも被害が出ているという。現地の状況が気にかかる。

 米地質調査所(USGS)によると、千島列島からカムチャツカ半島にかけては、太平洋プレートがオホーツク海プレートの下に沈み込み、世界で最も地震活動が活発な地域の一つだという。

 海外の遠地で起きた地震により津波警報が出たのは2010年2月のチリ中部の地震以来だ。大きな揺れを感じられない中での警報に戸惑う人もいただろう。

 国外の地震であっても、警戒を怠ってはならない。

 太平洋側で起きる海溝型地震について、政府の地震調査委員会は今年1月、30年以内の発生確率を引き上げた。

 南海トラフは「80%程度」、日本海溝宮城県沖(陸寄り)は「80~90%」、千島海溝十勝沖は「20%程度」となった。

 地震はいつ起きてもおかしくないと肝に銘じたい。

 日本海側には海岸線に近い断層が多く、海溝型地震と比べて津波が早く到達する。

 専門家の解析によると、昨年1月の能登半島地震では発生後数分で津波が到達した可能性がある。警報を見聞きしたら、すぐ高台に逃げることを徹底したい。