原発で繰り返される不祥事への不信感と疑念がある。最終判断は地元の意見をしっかり聞いた上で下されねばならない。
東京電力柏崎刈羽原発でテロ対策上の重大な不備が相次いだ問題で、原子力規制委員会の山中伸介委員長は、事実上の運転禁止命令を解除するかどうかを年内にも最終判断する見通しを示した。
規制委の会合で、事務局の原子力規制庁はテロ対策を巡る追加検査について、全ての項目で改善措置が確認できたと報告した。
東電が原発を運転する「適格性」を再確認した結果は「基本姿勢にのっとった取り組みを行っていることが確認された」とした。
いずれの報告にも委員から異論は出なかった。検査は想定の倍以上の延べ4268時間に及び、議論を尽くしたと考えたのだろう。
2021年4月に規制委が東電に核燃料の移動を禁じる是正措置命令を出して以降、一連の検査は最終局面を迎えることになる。
規制委は柏崎刈羽原発の現地確認や、小早川智明社長ら東電経営層との面談を実施した後、命令解除の是非を判断する。
記者会見で、山中氏は「改めて追加の検査をしなければいけない状況ではない」と述べた。テロ対策の取り組みを「自分の目で確かめたい」と強調した。
ただ柏崎刈羽原発では、今年に入ってからも、監視用の照明が半年以上も不点灯だった問題や、抜き打ちの違法薬物検査で陽性反応が出た社員を重要設備のある「防護区域」に通していた問題などが明らかになった。
花角英世知事は先月の会見で「もう3年前からあきれるような事案が続いている」と批判した。
山中氏は追加検査に影響を及ぼさない軽微な事案との認識を示すが、住民からすれば見過ごすことができない事柄だ。
一方で山中氏は「必要があれば地元との対話も行いたい」と述べた。結論ありきではなく、住民や首長らの意見を直接聞いた上で、不祥事が止まらない東電の企業体質を評価してもらいたい。
報告書案はテロ対策の改善措置に関して「定着しつつある」と記す。継続的に実効性がどう担保されるかが問われるだろう。
適格性については、規制委が17年にこれを認めた際の条件だった基本姿勢「七つの約束」が順守されているかを点検した。
会社としての決意を示すものだが、「福島第1原発の廃炉をやりきる覚悟と実績を示す」といった抽象的な項目が多い。どこまで実質的に評価できたのか、納得のいく説明が必要だ。
花角知事は最終判断が出れば原発再稼働の是非を判断する際の材料の一つとなると明言する。
規制委が地元に渦巻く不信をどう認識し、適格性をどう説明するのかに注目しなければならない。