十日町市中条甲の古布研究家、岩田重信さんが再現したアンギン。織り目の幅は4・5ミリ。縄文土器に残っていた布の痕には幅2ミリ程度のものもあり、糸の細さや織り目の幅で風合いが変わるという

 幻と呼ばれる布がある。アンギン。多年草の植物カラムシの繊維、青苧(あおそ)を糸にして織った布だ。織機を使用せず、縦糸と横糸を絡めて作り、前掛けなどの作業着になった。縄文時代にもあったという説もあるほど昔から使われていたとみられるが、いつの日か生活の中から消えた。

 アンギンは鈴木牧之の「秋山記行」に記されている。だが、実際にどのような布か分からず、長く「幻の布」とされた。

 本県の民俗学者、小林存(ながろう)は実物を探し、1953(昭和28)年、津南町の秋山郷で発見した。古いアンギンの上着が雑巾として再利用されていた。その後、十日町市でも相次いで見つかった。十日町・津南の妻有地域以外では見つから...

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