豊コシヒカリを使ったシャリでメカジキのすしを握る登喜和鮨の小林宏輔さん=新潟市中央区
豊コシヒカリを使ったシャリでメカジキのすしを握る登喜和鮨の小林宏輔さん=新潟市中央区

 米どころとして知られる新潟。海外での和食の広がりや国内での米価高騰・品薄などでコメに注目が集まる中、新潟県の資源であるコメを武器に、付加価値を高める動きが相次ぐ。おにぎりなどはインバウンド(訪日客)で人気を集め、誘客や活性化のコンテンツとなる可能性を秘める。重点企画「NEXTコンテンツ潮流」の第1シリーズは、コメを強みに、新たな発想や工夫で価値を創造するクリエーティブな動きを追う。(9回続きの3) 

 「硬派というか、男前なコメですよ。すし酢と混ざると最高にうまい」

 新発田市に本店と新潟市中央区に新潟店を構える「登喜和鮨(ときわずし)」の3代目、小林宏輔さん(45)は、数年前からシャリに使っている「豊(ゆたか)コシヒカリ」にほれこむ。

 兵庫県の農家の手によって生まれた豊コシヒカリは、一般的なコシヒカリよりやや大きく粒立った食感が特徴だ。登喜和鮨のコメを作る新発田市の農家、髙橋邦雄さん(64)は「一粒一粒がしっかりしていて、どんな料理でもへこたれない」と誇る。

 業界では、すしの味の決め手はシャリが7割とも言われる。粘りのあるコシヒカリを使うのは難しいとされるが、登喜和鮨では豊コシと炊き方、握りの技術で「口の中でほどけるシャリ」を実現している。

 県産の食材だけで握る。水揚げの状況に左右されるが、「誰も使わないような魚もトップクラスにしたい」と小林さん。試行錯誤の過程で「シャリの懐の深さ」に可能性を感じている。

豊コシヒカリを使ったシャリですしを握る登喜和鮨の小林宏輔さん=新潟市中央区

 イカを握るときは、シャリにかんきつの皮をまぜる。レモンを搾るより水分を抑えられるからだ。適度な酸味で、イカのねっとりした食感を楽しめる。

 アジア圏からも客が訪れ、約10席の新潟店は3カ月先まで予約で埋まっている。

▽「新潟に来たからこそ」のすし体験を

 すしはシンプルな構造だけに、素材の一つ一つが味を左右する。...

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