新潟日報社は3月8日の国際女性デーに合わせて新潟県内の女性の国会議員、県議、市町村議全101人を対象にアンケートを行い、82人から多様な意見が寄せられた。結果から見えてきたのは、女性議員が現場で実感している憤りや、女性の政治参加を進める上で環境整備などが不十分であることだった。アンケート結果を詳報する。

<調査方法>新潟日報社が2月中旬〜3月上旬に実施。新潟県の国会議員3人、新潟県議5人、女性議員がいない弥彦村と粟島浦村を除く新潟県内28市町村の議員93人の計101人に、ウェブのアンケート専用フォームを案内し回答を得た。名前や年齢など属性を除いた質問は全部で10問。回答したのは国会議員と県議は全員、市町村議員は28市町村の74人。年代別では20代2人、30代2人、40代17人、50代26人、60代21人、70代以上14人。

政治家を志した理由

最多は「問題意識があり挑戦」

 政治家を志した理由(複数回答)で最も多かったのは「政治に縁はなかったが問題意識があり挑戦した」で、38人が選んだ。

 次いで「後継者として指名された」が25人、「政党に勧められて」が19人となり、他者から推されて政治の道に入った人も多くいることが分かった。

 そのほか「家族や親戚など近しい人に政治家がいた」が12人、「市民団体や労働組合などで活動し問題意識があった」が11人、「意欲があり政治塾などに通った」が3人だった。

 「その他」を選んだ16人では、「尊敬している女性議員に誘われた」や「ロールモデルとなる人が身近にいて、自分も挑戦したいと思った」といった声に加え、「地域住民から女性議員の必要性と重要性を説かれた」という理由もあった。

選挙で苦労したこと

活動資金面での苦労、「偏見」も多く

 選挙で苦労したこと(複数回答)の設問では「スタッフや資材の確保」が48人で最多だった。「お金」を選んだ人も46人おり、活動資金の面での苦労も浮かんだ。

 「体力的な負担」「家族の説得」がともに31人。「育児や介護との両立で時間の制約がある」が27人、「女性への偏見」も18人に上った。

 「苦労したことがない」は5人にとどまった。

 「その他」を選んだ16人の中では「男尊女卑の市民感覚」、「SNS(交流サイト)への対策」を挙げる人がいたほか、「女性候補者をめがけて来る男性がいて、身の危機を感じたことがある」との声もあった。

セクハラ被害について

 選挙中や議員活動でセクハラ被害を受けた経験を「ある」としたのは29人(35・4%)だった。

 29人には加害者と被害内容を複数回答で尋ねた。加害者は「一般有権者」の22人が最多で、「同僚や先輩などの議員」が16人、「支援者」が7人と続き、身近な人からの被害が目立った。

言葉の暴力を受けたり体を触られたり…

 被害内容は、言葉による暴力や体を触るという具体的なものが多かった。「『女のくせに』など侮辱的な言葉をかけられた」と「婚姻や子育てなど私的な事柄に批判や中傷を受けた」がそれぞれ15人、「体を触られた」が11人など。

 その他では「酒宴でダンスの相手をしつこく誘われた(お断りしました)」「飲んでいる時に相手が酔っ払ってしまい、一緒に踊れと言われた」「容姿に対してSNS(交流サイト)に書き込まれた」などがあった。

性別障壁の有無

 議員活動をする上で性別が障壁になった経験があるのは30人(36・6%)で、4割近くに上った。

役職などで「男性優遇」感じることも

 30人に内容を複数回答で尋ねたところ、「出産や育児や介護との両立」「議会の制度や設備で女性を想定していないものがある」がいずれも16人で最多だった。「議会において女性議員への差別や偏見があった」「役職などで男性が優遇されていると感じた」は各12人だった。

 「その他」では、議員活動で男性と接する機会が多く「2人でいるとうわさになり仕事にならない」や、「妊娠中の理解が得られない」「(有権者の)相談対応で相談目的でない場合もあり、対応の場所や訪問など気を使う」との回答もあった。

女性の地位向上へ取り組みたいこと

「労働環境の改善」「政治参加の促進」望む声多く

 女性の地位向上へ議員として取り組みたいこと(三つまで)には、「働き方改革や賃金など労働環境の改善」を選んだ人が38人と最多だった。「女性の政治参加を促進」も37人で、現場議員の問題意識の高さがうかがえた。

 このほか、「女性に考慮した避難所運営など安全対策の推進」と「地域コミュニティなど女性の社会参画促進」も各29人が選択。「妊娠出産やDV被害など女性向け支援の強化」が25人で続いた。

 その他では「家事・育児を頑張っている人が認められる世の中に」「啓発活動より選択的夫婦別姓など制度の変革が必要」「女性のライフステージに合わせた健康管理・課題解決」などの意見もあった。

女性議員を増やすには

社会全体の「意識改革」「環境整備」求める

 女性議員をさらに増やすために必要なこと(三つまで)に関しては、「社会全体の意識改革」が最も多い45人、「社会全体で性別に関わらない働きやすい環境の整備」が44人、「夜の会合を減らすなど議員活動と家庭を両立しやすい環境整備」が32人で、意識改革と環境整備を求める意見が多数を占めた。

 候補者への支援を求める声も上がった。「女性政治家のロールモデル紹介や研修など女性候補者へ支援強化」は36人、「育児や介護の支援充実」は26人だった。

 このほか、議席や候補者の一定数を女性に割り当てる「クオータ制」の導入は25人が求めた。「男性を前提とした規則や慣例など議会改革」は14人が必要とした。

 その他の意見としては「企業、町内会、NPOなどさまざまな分野でのリーダーに女性を登用する」「議員活動や日常生活における安全性の確保」などがあった。

現状、これから…自由記述の内容

 自由記述には計55人がさまざまな思いを寄せた。主な内容を紹介する。

【現状への思い】...

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