
柏崎刈羽地域唯一の総合病院「柏崎総合医療センター」(柏崎市北半田2)の研修医の確保が、軌道に乗ってきた。かつては研修医の着任ゼロが続いたが、研修制度の充実や自治体の支援もあり、ことしで4年連続の着任となった。将来の医師不足の解消と共に、救急医療の担い手を増やす狙いがある。若い医師の存在は、厳しい経営状況に置かれた病院を元気づけてもいる。
医療センターには4月、6人の臨床研修医が着任した。指導医と病棟を回って診察したり、カルテを書いたりといった実践を積んでいる。菊池秋彦さん(24)は「全国の病院を見学したが、ここの雰囲気が断トツで良かった」と話す。
若い医師が毎年着任するようになり、関係者の念願だった教育体制が実現した。「教えられた研修医」が次の研修医を教えていくというチームでの指導体制「屋根瓦式」の仕組みだ。研修2年目の松浦甲明さん(27)は「多くのことを吸収できるようになった」と手応えを語る。
▽5年連続”研修医ゼロ”→環境整備やPRに力
医療センターには2017年度から21年度まで、5年連続で研修医が来なかった。危機感を抱いた病院は、自由度の高い研修メニューを整備。研修医のための半個室ブースを用意し、大学を通じたPRにも力を入れた。
自治体の支援制度も後押しになった。県は、MBA(経営学修士)の資格を持つ医師らに組織運営などを学べる「イノベーター育成臨床研修コース」を創設。柏崎市は医療センターで研修する医師に対し、海外の大学で学位を取る費用を、1250万円を上限に支援する制度をつくった。
こうした取り組みもあり、22年度に2人、23年度に3人、24年度には過去10年で最多の7人が着任。本年度は6人が着任し、現在12人が働く。

市の制度がきっかけで着任したという飯田聖さん(24)は、9月から米国・ボストン大に留学し、公衆衛生学を学ぶ予定だ。「慢性疾患を防ぎ、社会全体を健康にしたい」と話す。
市の支援には、臨床研修の終了後、医療センターで「常勤医師として2年間就業」などの条件がある。市国保医療課の椿勇一郎課長は「地域の医療に貢献してもらうための条件を付けている」と説明する。
▽応需率96%の総合病院「多くの症例、勉強になる」
医療センターは柏崎刈羽地域唯一の総合病院として、多くの救急搬送を受け入れる。要請に応じ、救急車を受け入れた割合を示す「応需率」は96%に上る。
「医師や看護師が少ない中で、研修医が力になってくれればと思った。これだけの症例を経験できれば、勉強にもなる」。指導医を務める丸山正樹副院長(52)は、研修医の募集に力を入れた背景を解説する。

丸山さんは「研修医が来るようになり、院内が明るくなった。若い医師の成長が、教える側のやる気につながった」とも話す。
病院の運営母体であるJA県厚生連は、経営難にある。長谷川伸副院長(64)は、研修医確保への影響は「ないとは言えない」と明かす。一方で、限られた予算の配分などから、研修医に「医療の核」を学び取ってほしいとも考える。長谷川さんは「研修医に評価してもらい、プログラムにさらに磨きをかけたい」...