終戦から間もない1945(昭和20)年11月3日、後の県美術展覧会(県展)になる「第1回文化祭新潟美術展」が新潟市で開かれた。目指したのは、文化の力による戦後復興。歴代の審査員には、東山魁夷、加山又造、東郷青児ら、そうそうたるメンバーが名を連ね、レベルの高い公募展として全国的にも注目を集めた。以来、新潟大火の55年、新型ウイルス禍の2020年を除き開催を重ね、若手作家の登竜門として、新潟県の美術の発展に貢献してきた。県展80年の歩みを振り返る。

 若手の登竜門ともいわれる県美術展覧会(県展)から、ステップアップした作家は少なくない。佐渡市の竹工芸作家、故本間一秋さん、秀昭さん(65)、浩一さん(31)は親子3代にわたって県展を出発点に活躍する。

 秀昭さんは1990年に初出品し、奨励賞、県展賞を相次いで受賞して無鑑査になった。その後国内最大の公募展、日展でも審査員を務めた。メトロポリタン美術館など米国の三大美術館に作品が所蔵され、海外からも注目される。秀昭さんは「作家としての原点は県展。地元の人に制作活動を知ってもらえる一番の公募展だ」と強調する。

 父の背中を見て育った浩一さんも2021年に県展をはじめとする公募展への挑戦を始め、...

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