
「被爆体験伝承者」の養成に協力する被爆者の岸田弘子さん(左)と、岸田さんの証言を伝承している細光規江さん=広島市
人類史上初めての原子爆弾が広島市に投下されてから80年がたった。被爆者の高齢化が進む中、広島では惨禍の記憶を次世代に語り継ぐためのさまざまな取り組みが進められている。広島市が地方紙記者を対象に7月28日〜8月7日に実施した国内ジャーナリスト研修「ヒロシマ講座」に参加し、継承に向けた動きを追った。(報道部・山田史織)
「『伝承者』の子たちの質問一つ一つが、私の体験やその時の思いを引き出してくれる」。5歳の時、爆心地から1・5キロ地点で被爆した岸田弘子さん(85)は、自らの体験を語る広島市の「被爆体験証言者」として活動しつつ、証言者の体験を第三者が語り継ぐ「被爆体験伝承者」の養成にも協力している。
被爆者の平均年齢が70代後半だった2012年、広島市は伝承者の公募を始めた。22年度には家族や親族の体験を伝える「家族伝承者」の養成も開始。伝承者は2年間の研修で原爆被害の概要や話し方を学びつつ、証言者と信頼関係を築き、講話原稿を応募者自らが作成する。
証言者は15年の49人をピークに減少傾向にあり、今年7月1日時点で31人。一方で、伝承者は250人、家族伝承者は40人おり、増え続けている。
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自ら体験していない伝承者が語るのは簡単ではない。10年前に...
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