単なる一過性のイベントとは異なる視点で評価する必要がある。準備期間から会期中を通じ、どのような成果を得て、課題を残したのかを検証し、将来に役立てることが求められる。

 158の国と地域が一堂に会した大阪・関西万博が閉幕したの会場を訪れた。

 日本国際博覧会協会が想定した2820万人には届かなかったが、2005年の愛知万博を上回った。運営費収支は230億~280億円の黒字と見込まれる。

 開幕当初は評価が低かったが、交流サイトなどで評判を呼び、次第に来場者が増えた。空飛ぶクルマ、人型のアンドロイドなど最新技術や海外パビリオンは、来場者の関心を高めただろう。協会によると満足度は約75%に上った。

 運営側の吉村洋文大阪府知事が「合格点」としたのは、一定程度理解できる。

 ただ課題は少なくなかった。当初目指した「並ばない万博」は早々に崩壊し、人気パビリオンは予約が取れない状況となった。

 混雑で優れた技術や文化に触れる機会を逸した人も多い。「いのち輝く未来社会のデザイン」とのテーマを十分感じられずに会場を後にしたケースもあっただろう。

 識者からも「来場者がテーマについて考える機会を日本国際博覧会協会が自らつくるべきだったが、十分だったとは言い難い」との指摘が上がったのは残念だ。

 今後は成果の活用や、検証に努めなければならない。

 万博には国内企業も集い、医療、人工知能(AI)などさまざまな技術を披露した。連携や実用につなげ、社会の変革を促したい。

 万博は「多様でありながら、ひとつ」を理念に掲げ、異なる文化を持つ国々、地域が参加した。

 国内で外国人排除の主張が高まる中、多文化共生の豊かさを見つめ直す機会ともなっただろう。

 会場跡などの活用も今後の課題となる。会場隣接地ではカジノを含む統合型リゾート施設(IR)の整備が進む。夢を与えた万博跡を汚す施設では困る。

 会場整備費は当初計画の倍近い2350億円に膨らみ、多くの税金が投じられた。建設費の未払い問題もある。国家事業として、今後も検証を続けていくことが不可欠である。透明性の高い後始末でなければならない。