人的被害が全国で相次いでいる。活動範囲が広がる時期を迎え、一層の警戒が求められる。行楽の際に遭遇しないようにし、命を守るための対策を徹底したい。

 2025年度の全国のクマによる犠牲者が、北海道や岩手県などで6人に上った。過去最多だった23年度と並んだ。

 このほか、長野と岩手両県の山林で見つかった遺体もクマに襲われた可能性がある。宮城県では襲われて死亡した女性と同じキノコ採りグループにいた女性が1人、行方不明のままだ。

 けが人も増えている。9月の人身被害は39人で、07年度以降で最多となったという。

 本県の被害も増加傾向にある。9月の人身被害は4件で、過去最多のペースだ。出没件数は7日時点で前年同時期の84件から423件に大幅に増加した。県は「クマ出没特別警報」を出し、最大級の警戒を呼びかけている。

 遭遇しないよう、山に入るときには鈴などで音を鳴らし、クマ撃退スプレーを持ち歩きたい。

 近年は市街地で被害も相次いでいる。北海道では新聞配達中の男性が襲われ死亡した。7日には、群馬県沼田市のスーパーにクマが侵入し客2人にけがを負わせた。

 県内でも4日、妙高市でランニング中の男性が襲われたほか、9月には村上市内で民家のガラス窓を割られる被害があった。

 クマが私たちの生活圏にまで入り込むようになっていることを、改めて肝に銘じたい。

 改正鳥獣保護管理法が9月に施行され、市街地でも自治体の判断で発砲できる「緊急銃猟制度」が始まったが、人手不足などで準備が間に合わない自治体も多い。

 クマに遭遇した場合に備え、対処法を確認しておく必要もある。

 背中を見せずに静かに後退し、襲われそうになった場合は地面に伏せて手やリュックサックなどで、首の後ろを守ることが有効だという(図参照)。

 注意すべきは、11月にかけて冬眠前のクマが餌を求めて通常より活動範囲を広げることだ。さらに今秋は各地で餌のブナの実が凶作だといわれている。

 今まで出たことがない場所にも姿を現す可能性もある。

 庭先に実っている柿などの果物を早めに収穫し、生ごみを外に放置しないなど、引き寄せないようにする必要がある。

 人口減少による耕作放棄地の拡大などで、生息域が広がった。隠れやすいやぶを刈り取るなど、人里に現れにくくする方策にも知恵を絞るべきだ。