分厚い扉を開けると、冷たい空気が体を包む。目の前には氷山のように雪が積み上がっている。奥に見えるのは日本酒を長期貯蔵できるタンクだ。

 「八海山雪室」。八海醸造(南魚沼市長森)が2013年に完成させた、約1千トンの雪を貯蔵できる国内最大級の雪室だ。年間を通し、室内の気温は5度ほどに保たれている。

八海山雪室の貯雪室にうずたかく積まれた雪。見学客からは「すごい」と歓声が上がった=9月上旬、南魚沼市長森 

 「日本書紀にも記載のある、環境に優しい雪国の生活の知恵です」。多くの雪室を設計してきた「SnowBiz」(長岡市)の社長、伊藤親臣(よしおみ)さん(53)はこう語る。雪室の内部の空気は自然に循環し、全体が均一に安定して低温になり、かつ湿度が高いため、野菜などは鮮度を保ったまま甘みが増すという。

 雪室は...

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