新型コロナウイルス禍が落ち着き、企業活動が活発になっている。業績が好調な企業は利益を従業員に還元し、消費の拡大がさらなる企業業績の向上につながる好循環を目指してほしい。
主な上場企業の2023年3月期決算が出そろった。
新型ウイルス禍からの経済正常化で非製造業の業績が大幅に伸びた一方、原材料価格の高騰により製造業は落ち込むなど、業種によって明暗が分かれている。
大手証券会社の集計では、資源高と円安の恩恵を受けた商社を含む卸売業や、人出が回復した陸運は大幅増益となったが、原材料費高騰で自動車を含む輸送用機器や電気機器は減益だった。
ただ全体としては増益基調にあるもようで、上場企業の純利益合計額は前期を上回っている。
主要企業で好調な決算が相次ぎ、24年3月期も増益が続く見通しであることもあり、株式市場は活況を呈している。
日経平均株価の先週の終値は3万1524円を付け、バブル崩壊後の最高値を更新した。
ロシアによるウクライナ侵攻が続き、なお世界経済の失速懸念が漂う中、国内の景気回復の流れを着実にするために欠かせないのは個人消費の拡大だ。
とはいえ、電気料金や食品などの値上げが生活を圧迫し、消費の先行きには不安要素がある。
企業に求めたいのは、利益を過度にため込むのではなく、賃上げに回すことだ。
賃上げによる個人消費拡大が企業業績を上向かせ、さらなる賃上げにつながる流れをつくれるかどうかが、日本経済を安定成長軌道に乗せるための鍵を握る。
今回の決算では県内企業も明暗が分かれたが、商品価格へのコスト転嫁が進んだことなどで売り上げを伸ばした企業が目立つ。
2、3月期決算の県内上場企業26社(銀行を除く)のうち、売上高を増やしたのは21社に上った。
純損益で見た場合は、増益または黒字転換は12社、減益は12社となっている。
亀田製菓やブルボンは原材料価格の高騰などが響いて減益となった一方、旅行客の回復などで新潟交通は3年ぶりに黒字となり、リンコーコーポレーションはホテル事業の回復で大幅増益となった。
人口減少が進む中、最近は地域貢献を強調する企業が目立つ。企業の地域貢献の核心は収益を上げて税金を納め、雇用の場を増やすことだ。地域活性化に企業が果たす役割は大きい。
日本商工会議所の調査では、23年度に賃金を引き上げた(予定を含む)中小企業の割合は全体の6割を超えた。新潟日報社の同様の県内主要企業アンケートでは9割を超えている。
優秀な人材を確保するためにも前向きに賃上げを行ってほしい。