命令が解除されても、原発再稼働を検討するには地元の十分な理解が不可欠だ。それにはまだ納得のいく説明が足りない。

 県など地元自治体は解除の判断を丁寧に確認し、住民の生命を守り、安全・安心を確保することを最優先に考えてもらいたい。

 原子力規制委員会は20日、東京電力柏崎刈羽原発に出していた事実上の運転禁止命令を27日に解除すると決めた。

 これまでに実施した追加検査などでテロ対策上の不備の改善状況を確認し、原発を運転する適格性についても再確認した。東電の小早川智明社長に意見聴取した内容から判断した。

 会合で、小早川社長は「福島第1原発事故を起こした東電が地域や社会に信頼してもらうのは、簡単な道ではない。全員参加型の改善を継続していく」と述べた。

 不祥事が繰り返されることへの不信感が地元に根強いことを考えれば当然の決意表明だ。有言実行で果たしてもらいたい。

 委員の一人は「再試験を繰り返してようやく合格ラインに到達した段階。評定はぎりぎりの『可』だ」と指摘した。東電は真摯(しんし)に受けとめるべきだ。

 会合後の記者会見で、山中伸介委員長は「改善を一過性にしない取り組みができているかどうか、日常検査の中で見ていかなければならない」と述べた。

 東電に対してお墨付きを与えるわけではない。規制委は厳しい監視を続けねばならない。

 福島第1原発では作業員の被ばくが相次ぎ、東電には「元請け企業のせいにしているのではないか」との批判もある。適格性への疑念は依然として残る。

 命令が解除されれば、東電は県や柏崎市、刈羽村に再稼働への理解を求めるとみられる。

 花角英世知事はこの日、規制委の判断を県として確かめる考えを明らかにし、柏崎刈羽原発の安全性を確認する県技術委員会でも精査する方針を示した。

 知事はこれまで規制委判断や福島事故を巡る県独自の「三つの検証」総括などを踏まえ、再稼働の是非を検討するとしてきた。

 検証総括を柏崎刈羽原発で事故が起きた場合の避難方法や避難生活にどう生かすのかなどは具体的に示されていない。県技術委の安全性確認も継続中だ。

 地元からは、規制委が住民の不安な思いを聞かずに方針決定したことへの不満や、地域経済にプラスの効果が出ることを期待する声が上がった。

 原発から半径5~30キロ圏の避難準備区域(UPZ)に入る長岡市の磯田達伸市長は「拙速に結論を出さないよう要望したので、ある意味残念だ」と述べた。

 再稼働の是非を判断するには、説明を尽くし、多種多様な意見をくみ取ることが求められる。