復旧が徐々に進んでいる一方で、通常の生活に戻れない人がいまだに多くいることを、政府や自治体はしっかり受け止めねばならない。
被災者に寄り添ったきめ細かな支援を、緩めずに続けることが求められる。
能登半島地震は1日で発生から3カ月になった。関連死を含めた死者は1カ月前より3人増え、244人になった。いまだに8千人以上が避難所での生活を余儀なくされている。
仮設住宅は石川県で約900戸が完成したが、本格化するのはこれからだ。避難者が故郷に戻って来ることができる環境づくりが急がれる。過疎化や高齢化に拍車をかけないように復旧を進めていくことが重要だ。
被害が大きかった輪島市や珠洲市は、市外への避難者が人口の約3割と推計されている。
◆8千戸で断水が続く
深刻なのは、約8千戸で断水が続いていることだ。共同通信の被災者アンケートでは、一番困っていることについて「断水が続いている」と答えた人が最多だった。
自治体の主な浄水場が被災した影響とみられる。2016年の熊本地震では、発生3カ月後に2戸を除いて断水が解消していたことと比べても、厳しい状況にあることがうかがえる。
水道が復旧した地域でも、業者不足で住宅内の配管の工事が遅れているため、実際には水道が使えない家庭がある。
トイレを使用できない家庭もまだ多い。奥能登2市2町は下水道の普及率が全国平均を下回り、多くの住宅が浄化槽を利用しているが、液状化で浄化槽が地表に浮き上がったり、配管が外れたりする被害が相次いでいるためだ。
避難者が自宅に戻る足かせになっていることは否めない。政府は、浄化槽の修理を全額公費で負担することを決めた。十分な工事業者を確保することも求められる。
政府は3月下旬、液状化被害の支援拡充を表明した。対象地域を限定せずに、地震で傾いた住宅の修繕に最大120万円を補助することなどを決めた。
2月に生活再建支援として最大600万円の支給を決めたが、石川県内6市町に限定し、本県などから、同じ災害の被災者を地域や年齢などで区別した対応は公平性を欠くといった批判が出ていた。
宅地の液状化被害は新潟、富山、石川のうち、本県が最も多い。県内での住宅被害は2万棟を超えた。
実態を踏まえた新たな支援策が示されたことは、被災者の安心につながるといえよう。
◆実態に合う支援策を
支援では被災自治体の再発防止事業に対する国の補助率も上げたが、実施には10戸以上がまとまることを条件としている。
液状化の被害は1964年の新潟地震など過去の地震で被害のあった地域と重なった。
そうした地域では今後も被害が繰り返される可能性があるという。自治体はしっかり対策を講じてもらいたい。
問題なのは、液状化による建物被害の実態と国の判定基準に乖離(かいり)があることだ。
液状化被害を判定する国の基準は、全壊は「床上1メートルまでの全ての部分が地盤面の下に潜り込み」としており、片方の端が潜り込んで傾いているケースは該当しない。
識者は生活再建のための支援になっておらず、判定基準を見直す必要があると指摘している。今後、検討が必要だ。
明るい兆しとしては、本県を含めた被災4県を対象にした観光復興支援「北陸応援割」が好調なことだ。ホテルや旅館などは、被災後に相次いだキャンセルで受けたダメージの回復につなげたい。
操業停止が続く中小企業もみられる。農林水産業や伝統産業も含め、支援を加速させたい。
岸田文雄首相は2024年度予算成立後の会見で、復興基金の設置方針を明らかにした。
基金は、自治体が実態に合わせ柔軟に対応できる利点があり、04年の中越地震でも活用された。被災地のニーズを的確にくみ取り、復旧や復興に生かしてもらいたい。
発生3カ月でさまざまな課題が見えている。
検証し、復興につなげるとともに、私たちも次の災害を見据えた万全な備えとしたい。