ガザの戦火はやまず、死者は増え続けている。一般市民や、支援に当たる外国人までが犠牲になっている。人道危機も深刻さを増し、このままではさらに多数の餓死者が出かねない。

 戦火が中東各地に広がっていることも憂慮される。国際社会は休戦交渉に力を注ぎ、人質の解放と和平の道を探る努力を続けねばならない。

 パレスチナ自治区ガザで、イスラム組織ハマスとイスラエルの戦闘が始まってから、7日で半年がたった。

 戦闘の発端となったハマスのロケット弾攻撃と、多くの人質を連れ去った行為は許されるものではない。

 ◆子どもや女性が犠牲

 一方、イスラエルのガザ攻撃は、あまりにも過剰と言わざるを得ない。

 ガザの惨状は目を覆う。ガザ保健当局によると、死者は3万3千人を超えた。女性や子どもが大半を占める。

 この1カ月で約3千人が亡くなった。1日当たり約100人もの命が失われている。

 「ガザは世界最大の墓地と化している」と言われる現状は、痛まし過ぎる。

 イスラエル軍が、国際法違反に当たる病院攻撃を繰り返していることは目に余る。

 1日には食料支援団体の車両が攻撃を受け、米国や英国、オーストラリアなどの国籍を持つ7人が死亡した。これまでには国連機関の職員も多数が犠牲になっている。イスラエル軍は、無差別攻撃をやめるべきだ。

 懸念されるのは、イスラエルのネタニヤフ首相が、ガザ最南部ラファに侵攻する方針を変えていないことだ。

 約150万人の避難民が密集しているラファに侵攻すれば、民間人の犠牲拡大は必至だ。

 人道危機も心配だ。国連機関などによると、ガザの人口の半分、110万人が「壊滅的な食料不足」に苦しみ、ガザ北部は5月までに飢饉(ききん)に襲われるとみられている。

 人道問題調整室(OCHA)の発表では、食料不足と脱水症で子ども28人が亡くなった。

 イスラエル戦時内閣は5日、人道支援物資の搬入拡大に向けた緊急措置を決定した。ガザ北部の検問所などを開放する。

 飢えに苦しむ人たちを急ぎ救わねばならない。

 ただ、戦闘が続く限り根本的な解決にはならない。飢饉を起こさないためにも一日も早い休戦へつなげたい。

 イスラエルの攻撃が、ガザにとどまらないことも不安だ。

 シリアの首都ダマスカスにあるイラン大使館の領事部の建物が1日、空爆で破壊され、イラン革命防衛隊の将官や市民ら13人が死亡した。

 イランは、イスラエルの仕業と断じ、外交施設への攻撃は「国際法違反」と非難している。

 イスラエルは、イランからレバノンの親イラン民兵組織ヒズボラなどに武器が供与されているとみて、シリア領内を再三攻撃している。

 イランはこれまで、イスラエル領土への直接攻撃を控えてきたが、報復を宣言した。万一、攻撃すれば、イスラエルを支援する米国も参戦し、イラン本国が攻撃される可能性もある。

 中東の緊張激化や紛争拡大を招くことは、断じて避けねばならない。

 ◆米国の対応に変化も

 注視したいのは、これまでイスラエルを擁護していた米国の対応が変化してきたことだ。

 国連安全保障理事会は3月下旬、停戦を求めることを決議した。米国が拒否権を行使せず棄権したためで、停戦決議の採択は初めてだった。

 米国はそれまで、「停戦」の表現がある決議案に拒否権を行使し、次々と葬ってきただけに大きな転換といえよう。

 拒否権行使に各国から非難が続出していたことや、米国内でもイスラエル寄りのバイデン政権への批判が高まっていることが要因だろう。

 米国はイスラエルに、民間人を保護する具体策の発表と履行などを求めた。

 国際社会からの孤立が進んでいることをイスラエル政府は自覚し、休戦交渉を成立させ、和平へ方向転換すべきだ。