茂木健一郎さん(撮影・徳丸篤史)
 茂木健一郎さん(撮影・徳丸篤史)
 衆院本会議で就任後初の施政方針演説をする石破茂首相=2025年1月24日
 故・堺屋太一さん=14年11月撮影
 立憲民主党の野田佳彦代表は首相の施政方針演説の「楽しい日本」を「言葉が空回り」と批判=25年1月24日、国会
 モーツァルトの肖像画(オーストリア政府観光局提供)
 モーツァルトとサリエリらが共作した曲の楽譜(チェコ国立博物館提供・共同)
 ドイツ語版『IKIGAI』を手にする茂木健一郎さん=筆者提供

 石破茂首相が、年頭記者会見や施政方針演説で繰り返し掲げた「楽しい日本」。評判は必ずしも良くないようだが、実は脳科学的には理にかなっている。

 もともとは、旧通商産業官僚として1970年の大阪万博の企画立案に関わったことでも知られる作家の故・堺屋太一さんが提唱した言葉。戦前の「強い日本」、戦後の「豊かな日本」に代わる新たな価値観を「楽しい」という表現に託し、日本人が自律的に創造性を発揮する未来を小説で思い描いた。

 石破首相はとりわけ、ご自身のライフワークの地方創生と絡めて「楽しい日本」を打ち出した。

 不評な理由の一つは、「楽しい日本」と浮かれるような気分になれない世相か。30年間経済が停滞し、手...

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