女性客を借金漬けにし、性的搾取する卑劣な手口だ。政府は被害を生まないよう有効な対策を急がねばならない。
被害女性の支援や、被害を防ぐための啓発などにも、社会を挙げて取り組んでいきたい。
ホストクラブでホストが恋愛感情を利用し、女性客に高額な注文をさせ、多額の借金を負った客が返済のため売春させられたり、性風俗店で働かされたりするなどのケースが社会問題化している。
こうした悪質ホストクラブのホストや関係者の摘発が2024年には計207人になり、前年から121人増えたことが、警察庁のまとめで分かった。
ホストが88人と最多で、店長などクラブ関係者が73人で続いた。女性客を風俗店に紹介するスカウトらも摘発された。
問題なのは、店やホストが飲食代を肩代わりして女性客に後払いさせる「売掛金」を悪用し、借金を負わせるケースだ。
匿名・流動型犯罪グループ(匿流)も関与し、利益を得ていると指摘される。警察庁は、全国の警察に取り締まり強化を指示したが、被害は後を絶たない。
国会でも対策を求める声が相次ぎ、政府は悪質ホストに加え運営法人にも打撃を与えるため、罰則を大幅に強化する風営法改正案を今年3月に閣議決定し、今国会に提出した。
恋愛感情に乗じた客への高額請求を違法行為とし、違反した場合は、店の営業許可取り消しなど行政処分の対象とした。借金支払いのため、客を威迫して売春や性風俗店などで働くよう求めることを禁止行為とした。
女性客を紹介したスカウトに店側が支払う対価「スカウトバック」も禁止した。
注目したいのは、無許可で営業した運営法人に科する罰金の上限を、200万円から150倍の3億円に引き上げたことだ。
現行の200万円では、店によっては一晩の売り上げより少なく、何の抑止力にもならないと疑問視されていた。
末端のホストだけでなく、法人も含めた搾取構造を根本から壊滅を図るためだろう。
営業許可のあるホストクラブは全国に約1100店舗あり、その6割が大都市の東京や大阪、愛知に集中しているが、被害は地方も無縁ではない。
交流サイト(SNS)で大都市のホストと接触し、地方から誘い出されるケースがあるからだ。
また、働き手を見つけられない地方の風俗店へ女性を供給することもあるようだ。
孤独感からホストクラブに通って多額の借金を背負った女性だけでなく、家族も返済を迫られ、被害が及ぶケースもみられる。
甘い言葉にだまされないよう啓発を強めていかねばならない。