突然だが、きょう5月13日は何の日か。

 「愛犬の日」「カクテルの日」でもあるらしい。新潟県の野球ファンにとって今年は、プロ野球の公式戦、DeNA対阪神がハードオフ・エコスタジアムで行われる日として、楽しみにしていたかもしれない。ただ、この日は戦後間もない1948年、新潟県で初めてプロ野球公式戦が開催された日でもある。

 新潟県の“プロ野球記念日”と言える5月13日に合わせ、当時の記憶を新潟日報の紙面や写真などからたどってみたい。試合の舞台となったのは、今はなき新潟市の白山球場だ。

右上の信濃川近くにあるのが白山球場。左下は当時の新潟県庁、現在は新潟市役所が立地する=1962年

[関連記事]
優勝は巨人?阪神?DeNA? 人気芸人&アナがガチ対談

[新潟日報fromアーカイブ]
メジャー球団が巨人と新潟で試合!? 鳥屋野球場で紡がれた日米野球のドラマ
1964年の閉場から60年、姿を消したもう一つの新潟競馬場「関屋競馬場」
祝!イチローさん米殿堂入り!プロ入り初本塁打は長岡悠久山球場
4度味わった“悔しさ”の歴史…上尾野辺の喝、激闘、立ちはだかった川澄・澤
「リトバルスキーが来たナビスコ杯」から始まった新潟サッカー発展の歴史
J1新潟の新監督に決まった樹森大介氏、実はJ初ゴールの相手が…!?

ダイナマイト打線が新潟に!!

 新潟県で初めてのプロ野球公式戦の開催は、1948年5月13日のこと。プロ野球(当時の日本野球連盟)が一つのリーグで8球団で争った時代だ。

 阪神(大阪)タイガースと中日ドラゴンズが、新潟、長野、松本を転戦する信越シリーズの第1戦。新潟日報の記事では「日本野球初の地方公式試合」とも銘打たれた。

 早速、当時の様子を紙面で見てみよう。

当時の試合をチーム紹介で盛り上げる夕刊ニイガタ

 これは前日の「夕刊ニイガタ」の記事。正確に言えば新潟日報社とは当時別会社(2年後に合併)であり、社長は、歌人で書家の會津八一だ。

 見出しは「戦績は二勝二敗 あす相まみゆ両球豪」。冒頭では「いよいよあす球界ファンの血をわきたたす日本野球阪神対中日の一戦が白山球場に華々しくくりひろげられる」とある。ご丁寧に、阪神が試合前日の夜8時に、中日は当日の朝4時に新潟駅に到着するとも伝えた。

 注目されたのは最下位の中日ではなく、南海に次いで2位だった阪神の方。記事にも「ダイナマイト打線」とあるように、走攻守そろった外野手の別当薫に名捕手の土井垣武、そして「物干し竿」と呼ばれる長いバットで知られるミスタータイガース、藤村富美男が4番に座る。史上最強とも言われる打線だった。

 一方の中日は、シーズンワーストタイ記録の83敗を記録した年。服部受弘や清水秀雄ら投手陣が何とか踏ん張るも、打線は迫力を欠いていた。

試合当日の新潟日報

 試合の主催は新潟日報社。次に、試合当日の様子を伝える紙面を見てみたい。

「物干し竿」

 まず夕刊ニイガタ。にぎやかに紙面を埋めているが、実は阪神対中日という本番の試合が始まるまでの内容でここまで書いている。夕刊で締め切り時間の制約があったためだろう。

 見出しで「杉山(阪神)ホーマー第一号」とあるのも、これは前座試合での話。阪神と中日の若手混成軍が、新潟クラブなど地元連合軍と対戦したとみられる。結果は6対6。地元選手の奮闘に喝采が送られた。新潟の4番投手石黒とは、長岡中から早大に進み、主将として活躍した石黒久三さんのことだろうか。

 気になったのは左側の記事。新潟のプロ野球狂騒曲とも言えるエピソードを紹介している。200人の某工場では3分の2の人員が欠勤届を出したという。三塁側の午前1時の来場客が一番乗りかと思いきや、一塁側には午前0時に旅館の主人が「わしあ、飯よりもプロ野球が大好きで」と陣取っていたという話も。

 阪神の選手は特に人気だったようだ。

 宿舎の西山旅館に着くや、ここもフアンの学童達で一杯の出迎え、落ち着くひまもなく“藤村さーん”“別当さーん”と門口に立って選手を呼ぶ、球場では闘志満々の藤村主将もここでは良いお父さんぶりで“明日来いよ”とやさしく断つていたがとうとう引張り出され差出された紙にサインをしてやつている、若林名監督の姿が見えないのがいささか寂しいが、藤村主将は早くも新潟クラブのメンバーを尋ねたり、あすの秘策をめぐらしていた“若林はすぐ治りますよ”と藤村主将の言葉、別当に“調子は?”と尋ねた、にやつと笑つて答えず、自信満々の顔つきだった
 表ではもう十時過ぎだというのにまだ帰らない子供たちの群れが、“別当さんホームランを打つてね、あす応援に行くよ”とかわいい声援を送っていた

 おおらかな時代のエピソードだ。ちなみに漫画家の水島新司さんは白山球場近くで育ったはず。漫画「あぶさん」の物干し竿、「男どアホウ甲子園」の藤村甲子園と影響を受けており、もしかしたらこの記事の子供たちの中にいたのかも??

生きたカモ2羽…?

 ようやく本番の試合...

残り2004文字(全文:3602文字)