政治への信頼をどう取り戻すのか。「政治とカネ」を巡る問題の決着を図らなくては、国民の不信感は払拭できない。
秋の臨時国会で結論を得るべく、各党はどのように取り組むのか。参院選の選挙運動期間も残り4日となった。もっと活発な論戦を求めたい。
自民党派閥裏金事件に端を発した政治とカネの問題は、先の通常国会では企業・団体献金の扱いが大きな焦点だった。
自民は年1千万円超を献金した企業・団体名を公表し透明性を高める法案を提出した。一方、立憲民主党や日本維新の会、参政党など5党派は献金禁止法案を提出した。だが、ともに採決に至らず継続審議となった。
結論が先送りされたのは、昨年の臨時国会と今年3月末に続き3度目だ。今回は合意への新たな期限も決められなかった。これでは改革への本気度が疑われる。
「裏金議員」らに対し政治倫理審査会を開いたり、予算委員会で参考人招致をしたりしたものの、真相解明は進まなかった。
自民が昨年秋の衆院選に続いて、6月の東京都議選でも大敗したのは、政治とカネの問題を重視した有権者が多くいたからだろう。国民が依然厳しい目を向けていることは明らかだ。
しかし、石破茂首相は参院選公示前に行われた党首討論会で、調査研究広報滞在費(旧文書通信交通滞在費)の使途公開や、政策活動費の廃止に言及して「ずいぶん前進した」と述べた。理解に苦しむ発言だ。
企業・団体献金の扱いについて、参院選での各党の主張は、存続と廃止に分かれる。
自民は禁止ではなく公開を主張し、改正政治資金規正法にのっとった政治資金の透明化と厳正な法令順守を一層推進し、「令和版政治改革大綱」を策定する。
連立を組む公明党はカネの流れの透明性を高めた上で規制を強化する。野党では、国民民主党が献金の受け手規制を含む透明性強化とデジタルトランスフォーメーション(DX)化を進める。
一方、立民は企業・団体による政治資金パーティー券の購入禁止や政治資金収支報告書等の公開時期を前倒しする。
維新は個人献金の促進、共産党は政党助成金制度の廃止、れいわ新選組は選挙の供託金制度の廃止などを主張している。
気になるのは、昨秋の衆院選では最大の争点だった政治とカネの問題が、参院選では物価高対策などに埋没して、候補者らからあまり語られないことだ。
政治改革の機運が失われないように、各党はその具体策を強く訴えてもらいたい。