香山リカ
 香山リカ

 7月16日夜、多くの人が「えっ」と驚きの声を上げた。第173回芥川賞・直木賞のどちらもが「該当作なし」だったのだ。

 7月初旬には、世界でも権威があるとされる推理小説の賞「ダガー賞」(英国推理作家協会賞)の翻訳部門に、日本人作家の作品としては初めて王谷晶さんの『ババヤガの夜』が選ばれ、大きな話題を呼んだ。出版界は、ダガー賞に続いて芥川賞、直木賞の受賞作品にも注目が集まるだろう、と期待したはずだ。その中での「該当作なし」を残念に思うのは私だけではないだろう。

 直木賞の選考委員である京極夏彦氏も、今回の発表のあとの記者会見で「極めて最後までそれぞれの選考委員が受賞作を出そうとあがいていた」と語った...

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