政策をスピード感を持って実現するには、党派を超えた連携が不可欠だ。多数派となった野党が国民の期待にしっかりと応えていけるか、真価が問われる。

 参院選では、与党の自民、公明両党が大敗を喫し、非改選を含め過半数割れとなった一方、野党が全体として議席を増やした。

 野党第1党の立憲民主党は改選議席と同じ22と横ばいだったが、改選4の国民民主党は17、改選1の参政党は14と大幅に伸ばした。

 日本維新の会、れいわ新選組、社民党などが改選前から微増または横ばいと、勢力が大きく変わらない中で、国民民主や参政といった新興勢力が伸長し、与党批判の受け皿になったと考えられる。

 手取りを増やすと訴えた国民民主、「日本人ファースト」を掲げた参政の両党とも、20~30代の支持を集めたことが特徴だ。

 交流サイト(SNS)や動画などを駆使した。政治に参加しなかった層の支持も獲得した。

 一方で、SNSなどでは排外主義的な主張も広がり、反グローバリズムの動きが顕在化した。

 新興勢力が躍進した背景には、既成政党への忌避感や有権者の志向の多様化に加え、格差の固定化への不満があるとみられる。

 与野党は選挙で示された民意を踏まえ、社会や政治の安定に力を尽くさねばならない。

 衆参両院で多数派となった野党は、まとまりさえすれば、多くの法律を成立できるようになる。

 ただこれまでは足並みがそろわない場面が多く、先の通常国会では政策ごとに与党と連携する部分連合の動きが目立った。

 多党化し、主張が大きく違う政党もある中で、政策実現のために野党が結束するかどうか。

 秋の臨時国会で審議される2025年度補正予算案に注目したい。与党が物価高対策で掲げる現金給付案に、選挙戦で強く批判した野党の対処姿勢が焦点となる。

 通常国会で野党7党が共同提出し、廃案となったガソリン税の暫定税率廃止法案は、立民の野田佳彦代表が10月1日から実施する内容に変え、野党で連携し成立を目指す考えを表明している。

 参院選で野党がそろって公約した消費税減税の議論もある。

 ただ各党の主張は範囲や税率、期間などが異なり、協議が難航する可能性が高い。

 注視されるのは、こうした課題で野党各党が財源論にも真摯(しんし)に向き合うかどうかだ。

 社会保障に充てられる消費税の税率引き下げには巨額の代替財源が必要で、市場では財政悪化の懸念が高まっている。

 ガソリン税の暫定税率も廃止すれば国と地方の大幅な税収減が見込まれ、穴埋めが求められる。

 野党は票を投じた国民の期待を一層強く自覚し、責任ある形で政策を打ち出してもらいたい。