選挙で国民の厳しい審判を受けてもなお、党内政局に終始している感が否めない。なぜ信を得られなかったのかを、真摯(しんし)に議論するべきである。

 国政のビジョンを示さなければ、国民からの信頼を取り戻すことは難しい。

 自民党は、参院選での大敗を総括する両院議員懇談会を開いた。冒頭以外は非公開で、約230人が出席し、予定の2時間を超え約4時間半に及んだ。

 石破茂首相(党総裁)は冒頭、謝罪の言葉を述べたものの、米国との関税交渉合意や社会保障と税の一体改革などを挙げ、「決して政治空白を生むことがないように責任を果たしたい」とし、改めて続投の意向を強調した。

 出席者によると、半数以上から「首相は選挙でノーと言われた。身を引くべきだ」などの退陣要求が出た。続投を支持する声もあったが少数だったという。

 党役員会は29日、正式な議決機関「両院議員総会」を近く開くと決めた。議題は今後協議する。

 退陣を迫る若手や中堅が総会開催を求める署名を集め、必要な数に達したとしており、提出を前に先手を打ったとみられる。

 事態の沈静化を狙っているのだろうが、石破氏への責任追及がさらに強まり、党内対立が激化する恐れもある。

 だが、石破氏を総裁から降ろすだけでは党勢は回復できまい。

 参院選も昨年の衆院選も、自民大敗の要因には、派閥裏金事件の真相究明に後ろ向きで、企業・団体献金改革も先送りにした党の体質への不信がある。

 事件に関わった旧安倍派をはじめ保守系議員らが「石破降ろし」を活発化させていることにも違和感を覚える。政治とカネの問題に向き合ってきたのか、改めて襟を正す必要がある。

 党が8月中をめどにまとめる方針の、参院選を総括する報告書にも注目したい。

 共同通信が行った参院選の出口調査で、自民党に比例代表で投票したと回答した人の割合は、50代、60代、70歳以上ではトップだったが、40代以下では国民民主党や参政党に後れを取る結果となった。高齢層への偏りが顕著だ。

 物価高が続く中、若い世代を中心に現状への不安や不満を抱える人は多い。自民の政策が十分対応した内容だったかという検証も欠かせない。

 混迷は国民生活に悪影響を与えかねない。大幅に議席を減らしたとはいえ、与党として政権を担うのは依然、自民だからだ。

 内政外交の課題は尽きない。自民の党内闘争が続けば、政策課題にしっかり向き合うことなどできないだろう。

 このままでは党勢回復はおろか、有権者から一層見放されるのではないか。