そこに住む人たちにとってかけがえのない移動手段であり、生活の命綱ともいえる。「廃止ありき」の議論は許されない。

 経済効率を優先して切り捨てるのではなく、まずは地元の声にきちんと向き合ってほしい。

 JR西日本が、利用低迷の続く大糸線の糸魚川-南小谷(おたり)(長野県)間について、廃止も視野に検討していることが明らかになった。

 リゾート列車の乗り入れなどで誘客を図ってきた経緯もあり、突然の廃止検討に地元では困惑が広がっている。

 同社は地元自治体などと同区間の持続可能性に関する議論を3月にも始める意向だ。

 事実上の廃止となるバス転換や、列車の運行と設備の保有を別の主体が担う「上下分離方式」もテーマになり得るという。

 大糸線は地元にとって重要な交通機関だ。米田徹糸魚川市長は「廃止は認められない。きちんと社の考えを説明するよう強く求めていく」としたが、当然だろう。

 1995年の「7・11水害」後の復旧費は新潟、長野両県が負担しており、その後も官民が協力して沿線の活性化に取り組んできた。

 一方的な見直しとならぬようJR西と行政、住民が納得できる結論を導いてもらいたい。

 地方鉄道の収支悪化は確かに深刻だ。

 JRの場合、人口の多い都市部の在来線や新幹線の収益で地方路線の赤字を埋める構造となっている。

 しかし、人口減に加え、新型コロナウイルス禍で在宅勤務やオンライン会議が普及し、こうした「内部補助構造」も成り立ちにくくなった。

 旧国鉄時代、1キロ当たりの1日の平均乗客数を示す「輸送密度」が4千人未満になると、バス転換の目安の一つとされた。

 糸魚川-南小谷間の2020年度の輸送密度は50人で、スキー客らでにぎわった頃に比べて9割以上減っている。目安よりは大幅に少ない。

 厳しい経営環境は理解できるが、大糸線のような地方路線は生活に欠かせない移動手段であり、経済効率だけなら存続は厳しいところが多いだろう。

 感染禍にさらされる地方路線は大糸線だけではない。国土交通省は、苦境にある地方鉄道の在り方について抜本的に議論する有識者検討会を立ち上げた。地方の意向を踏まえ、再構築に向け話し合いを深めてほしい。

 地方公共交通の苦戦は鉄道だけではなく、離島航路や路線バスなどでも顕著だ。

 本県では、債務超過に陥っている佐渡汽船が、みちのりホールディングスから出資を受け、子会社化される。

 感染禍での経営悪化に伴い、新潟交通は新潟市から緊急支援を受ける見込みになった。

 感染が収束に向かったとしても、旅客需要が完全に戻ることは難しい。地域に不可欠な交通インフラをどう維持していくのか、もっと地元で積極的に議論する必要がある。