暮らしをどう再生するかは被災者によって異なる。さまざまな状況下にある被災者を取りこぼさないように、多様な支援策を講じることが欠かせない。

 政府は、能登半島地震の被災者支援の政策パッケージを決定した。生活再建、なりわい再建、災害復旧が柱となる。住み慣れた土地で元の生活を取り戻せるよう、数次にわたり財政措置する。

 住宅や工場、道路などの被害額は石川、富山、新潟の3県で1兆1千億~2兆6千億円程度と推計されるが、実態はまだ精査できない。支援策は状況に応じて柔軟に追加する必要がある。

 即時の対策では、家屋の損壊額が一定規模以上などの世帯に対し、10万円を支給する。

 家屋の倒壊や津波で何も持ち出せなかった被災者のために、給付を急いでもらいたい。

 避難所の環境が厳しく、災害関連死が懸念されるため、支援策には、被災地から離れてホテルなどに身を寄せる2次避難を進める取り組みも盛り込まれた。

 ただ被災地には、2次避難が人口流出のきっかけになると懸念する声がある。2次避難した人が帰還をあきらめる事態を招かぬように、住宅や生活の再建につながる支援に力を入れてもらいたい。

 政府は、住宅が被災した世帯を対象に、最大300万円(全壊の場合)の被災者生活再建支援金を迅速に支給するとしている。

 一方、立憲民主党など野党4党は、最大支援額を600万円とする内容の被災者生活再建支援法改正案を衆院に共同提出した。

 支援金は国と都道府県が折半で負担するのが原則で、最大額は2004年に300万円に引き上げられてから変わっていない。

 物価高など経済情勢や社会情勢の変化を踏まえ、金額や対象要件の緩和といった制度の在り方は、議論されてもいいだろう。

 道路や水道をはじめとするインフラがいつ復旧するかは、再建の見通しを立てる上で重要だ。

 なりわいを再生できるかどうかは復興の鍵になる。地場産業や伝統工芸を守るには、中長期的な視点に立った支援が不可欠だ。

 政府は26日、政策パッケージに盛り込んだ施策の財源として、23年度の予備費から1553億円を支出すると閣議決定した。9日には約47億円の支出を決めた。

 予備費は国会の審議を経ずに内閣の裁量で使い道を決められる。岸田文雄首相は、予備費を順次活用することが「最もスピード感があり適切だ」と強調する。

 聞こえはいいが、何でもかんでも予備費を使っていいというものではない。補正予算を速やかに組み、国会で与野党が審議することが、被災者の多様な声をくみ上げることにつながるはずだ。