今なお車中泊や、損壊した自宅で暮らす被災者がいる。ライフラインを早く復旧し、生活を再建する必要がある。命を守るため、行政は避難所暮らしを終わらせることに全力を挙げてほしい。

 石川県能登地方で元日夕方に起きたマグニチュード(M)7・6、最大震度7の能登半島地震から1カ月がたった。

 災害関連死を含めた死者は230人を超えた。帰省していた新潟市の小学5年生も含まれる。亡くなった人の冥福と安否不明者の無事を祈りたい。

 警察の調査によると、死因は圧死が最も多く、次いで窒息・呼吸不全だったが、3番目には低体温症・凍死が多かった。救出までに寒さで体力を消耗したとみられる。

 能登半島は地滑りが起きやすい地域が多く、土砂崩れや道路損壊が多発、集落が孤立した。海岸の隆起や津波、空港の被災で空や海からの救援も滞ったことが悔やまれる。

 三方を海に囲まれた半島地域での救援態勢や日常的な防災活動に課題を残した。

 ◆長期化する避難生活

 石川県での住宅被害は4万3千棟以上、断水による影響は4万戸を超す。1万4千人が自宅を離れて避難生活を送る。

 このうち6割以上は体育館や集会所といった1次避難所に身を寄せる。県はホテルや旅館などに2次避難するよう促すが、まだ3割ほどだ。

 1次避難が長期化すると、感染症や災害関連死の懸念が高まる。だが、2次避難先の7割超は県外だ。仕事や介護を抱えていれば難しく、住み慣れた土地を離れる不安もあるだろう。

 2次避難を促進するには、被災者の心に寄り添い、仮設住宅の建設状況やインフラ復旧の見通しなど地元に戻れるめどを示すことが求められる。

 車中泊や在宅避難についても早急に実態を把握しなければならない。避難所生活にストレスを感じ、安全性が確保できない自宅に戻った人もいるだろう。

 県は仮設住宅などを3月末までに1万8200戸提供できるとするが、名古屋や大阪など県外の1万1700戸も含む。

 移動がスムーズに進むかどうかは不透明だ。集落ごとの避難を望んでも実現できる施設がない現状もある。

 避難者ニーズを把握し、居住地に近い場所での仮設住宅をさらに用意することが望まれる。

 今回、住宅被害が多いのは、高齢化率が高くて古い木造家屋が多く、資金難などで耐震化が進まなかったためとみられる。

 耐震改修工事への助成制度だけでなく、低コスト工法や簡易的な耐震改修などの普及を図ることで対策を広げたい。

 住宅や道路などの被害額は石川、富山、新潟の3県で推計1兆1千億~2兆6千億円程度に上る。中小企業や小規模事業者の被害は3県と福井県で数千億円規模になる可能性がある。

 被害が大きい半島先端部の輪島、珠洲両市などでは、災害ごみの片付けや運搬を担うボランティアの受け入れ態勢がまだ整っていない。

 県には既に県内外から1万8千人以上が登録している。水道などのインフラの復旧を急ぎ、関係機関は支援者が被災地で活動できる環境を整えたい。

 伝統工芸や観光が盛んな地域経済への影響が懸念される。なりわいを取り戻すため地場産業の再建や雇用の維持に向け、国は補助金や金融支援で積極的に支えなければならない。

 ◆液状化被害へ対策を

 本県の住宅被害は1万3千棟を超す。新潟市西区で液状化の被害が集中し、住宅が傾き道路が陥没するなどしている。

 専門家は1964年の新潟地震で液状化した地域と重なると指摘する。街区単位での地盤改良など対策を探ってほしい。

 政府の地震調査委員会は震源断層について、能登半島沖の北東から南西に延びる150キロ程度の逆断層と推定している。

 一方、日本海側の地震に詳しい研究者は、震源断層に連なる佐渡沖の活断層が割れ残っている可能性が高いと指摘する。

 この断層でM7クラスの地震が発生すると、本県には最大3メートル程度の津波が押し寄せる危険性があるという。

 津波は10分以内に沿岸に到達するとの見方もある。避難方法や救援態勢を再確認し、地域で共有しておかねばならない。