災害で生じたごみが片付かない間は、住民も復旧や復興を感じられないのではないか。県境を超え、行政と民間が連携して膨大な廃棄物処理を進める態勢を早く築いてもらいたい。
能登半島地震を巡り、石川県は倒壊した建物のがれきなど県内の災害廃棄物の推計量が244万トンに上ると発表した。
県内の年間ごみ排出量の約7年分に相当し、被害が大きい奥能登の珠洲、輪島など2市2町から出る分が約6割を占めた。この地域に限れば59年分に当たる。
処理が滞れば、生活再建の遅れにつながりかねない。路上に放置されたごみは車の通行を阻み、可燃物とガスボンベなどが混在すれば火災の危険もあるだろう。
国や県は処理作業を効率化し、県外での広域対応を含めて約2年での完了を目指す。本県を含めた全国的な支援が欠かせない。
地震の影響で使用できないごみ処理施設もある。奥能登地域は主要道路が被災し、運搬も容易ではない。険しい地形が多く、仮置き場や中間処理施設の用地を確保することも難しい。
県と政府は海上輸送を検討するが、被災した港は応急復旧した状態で、大量の廃棄物を円滑に他県へ運び出すには不安がある。
政府は地域外への輸送量を削減するため、現地でのリサイクルも進める方針だ。コンクリート片は復旧工事で舗装道路の下地などに利用でき、建材や木くずはバイオマス燃料にもなる。
分別の徹底が求められる。再利用率を高めれば、輸送量を節減して処理費の抑制にもなるだろう。東日本大震災時には被災地の渋滞も緩和できたという。
宮城県は廃棄物担当の職員を派遣、分別のノウハウを提供する。震災時、ごみを持ち込む被災者に細かな分別を呼びかけたほか、分別の作業員の採用で雇用を創出したことは参考になろう。
本県も中越、中越沖地震や相次いだ水害で得た災害ごみ処理の経験を被災地に伝えてほしい。
被災地では住宅などの被害認定調査が始まり、今後、損壊家屋の解体が本格化する。家具の搬出や思い出の品の仕分けには大勢のボランティアの手が必要になる。
広域的な処理態勢の整備を急がねばならない。そのため国には、自治体への財政支援をしっかり果たしてもらいたい。













